「海産物の購入を強引に勧める電話勧誘販売・送り付けトラブルに注意!-年末にかけ、高齢者のトラブルが増えています!ご家族で注意を!-」
国民生活センター
国民生活センター 2026.10.28
外部リンク:国民生活センター 報告書本文(PDF)
実家の母に、「年末セールでカニを安く売ってる」って電話が来たみたいなんだけど・・・
おいしそうだったから買ったら、今度は「2回分の契約になってる」って言われて、困ってるみたい。
おー、そういえば、うちの店にも来たぞ。
「お得意様に特別価格で」とか言って。
年末になると、この手の電話がかかってきますね。
国民生活センターが10月28日に注意を呼び掛けました。相談は2025年度に4,377件、その6割以上が70歳代以上の方です。
ネガティブ・オプション
これについては、以前もこのブログで記事を書きました。
改めて、結論を書いておきます。
- 頼んでいない海産物が届いても、受け取る必要はありません。受け取ってしまった場合も、送り付け商法に当たるなら、処分しても代金を払う義務は生じません。
- 代引で払ってしまった代金は、返金を求めることができます。
- 電話で承諾してしまった場合でも、書面を受け取ってから8日以内なら、クーリング・オフができます。
いろいろなパターン
ところで、最近のネガティブ・オプションは、バリエーションに富んでいます。
少し、紹介しましょう。
断ったのに、代引で届いた
事例1の女性は、一度カニを買った後、同じ男性から「今度は福袋を付けて送る」と電話を受け、返事をする間もなく切られました。留守番電話に「送らないでほしい」と録音したのに、代引配達で届きました。
これも、シンプルに、受け取らなくてよいです。契約は成立していません。配達員に事情を話して、持ち帰ってもらってください。
この女性は、その後、「承諾したのになぜキャンセルするのか。送料分も含めて損害賠償を請求する」と怒鳴られています。
そりゃひどいな。
しかし、その消費者も京都人で、はっきり嫌だと言わなかったのかもしれないな。
明確に承諾していればもちろん契約は成立します。
しかし、返事をする間もなく電話を切られた人が、承諾したことになるでしょうか。契約がない以上、受取りを拒んでも債務不履行にはなりません。送料は、勝手に送った業者が負うことになります。当たり前ですが。
受け取ってしまった
さて、頼んでいない商品を一方的に送り付けて代金を求める手口は、「送り付け商法」(ネガティブ・オプション)と呼ばれます。特定商取引法59条1項は、次のように定めています。
「販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。」
これ、ちょっとわかりにくいのですが、要するに、いちど買った人(申込者等)に、その契約とは別の商品を送り付けた場合も、対象です。「福袋付きの2回目」は、ここに当たります。
以前の記事にも書きましたが、2021年の改正(同年7月6日施行)で、それまでの「14日間は保管しなければならない」という扱いがなくなりました。消費者庁のQ&Aは、次のように述べています。
「事業者が金銭を得る目的で、売買契約に基づかないで一方的に送付した商品については、消費者が直ちに処分できるものであり、開封や処分を行ったことによって、消費者に支払義務が生じることはありません。」
消費者庁「送り付けに関するQ&A」A3
外部リンク:消費者庁「特定商取引法の通達改正・一方的に送り付けられた商品に関するチラシ等の公表について」
これを処分しても、代金を払う義務は生じません。
ただし、いくつか、注意があります。
1つは、この規定は、販売業者が代金を取る目的で送り付けた場合のものだということです。宛先を間違えた純粋な誤配には、当てはまりません。差出人が誰で、なぜ届いたのかが分からないうちは、開けずに、消費生活センターに相談してください。
差出人がわからないのに、差出人に連絡するのもちょっと怖いよね・・・
もうひとつは、ゴリ押しをしてくる業者がいるということです。もし、承諾があったと認められれば、契約は成立しており、食べたことは受け取ったものとして扱われます。処分の前に、伝票、納品書、着信履歴を残しておき、できれば消費生活センターに相談してください。
「2回分の契約になっている」と言われた
事例2の男性は、応援する気持ちで毛ガニを1回買いました。すると、「最初の商品を届けた際、2回目の注文について書面を入れていた。2回目まで買ってもらわないと困る」と言われました。
母も、それを言われた。契約したって言われたら、払うしかないと思っちゃうよね。
思わされるのが、この手口です。59条の2は、次のように定めています。
「販売業者は、売買契約の成立を偽つてその売買契約に係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。」
「2回分の契約になっている」と偽って送れば、ここに当たります。消費者庁のQ&Aも、「ご注文いただいた商品です」と言われた場合について、こう述べています。
「仮に事業者が、売買契約があったかのように装ったとしても、売買契約は成立しておらず、代金を支払う必要はありません。」
消費者庁「送り付けに関するQ&A」A4
箱に入っていた「書面」で2回目の契約が成立する、ということもありません。契約は、申込みと承諾で成立しますので、いくら「注文書」「契約書」という紙が入っていても、契約は成立していません。
また、仮に、電話で「2回分です」と嘘を言われ、それを信じて承諾してしまった場合でも、契約を取り消すことができます(同法24条の3)。電話勧誘販売で、契約の内容について事実と違うことを告げることは禁じられています(同法21条1項)。
代引で、払ってしまった
代引で払ったなら、そりゃあ、受け取ったのと同じだろう。
さすがに取り返すのは無理じゃないか?
受け取り=契約したことにはなりません。国民生活センターも、代引で払って受け取ってしまった場合でも、一方的に送り付けられた商品については代金を支払う必要はなく、返金を求めることができるとしています。
「仮に、売買契約に基づかないで一方的に商品の送付を受けた者が、処分したことを理由に代金の支払を請求され、代金支払義務が存在しているものと誤解して代金を支払ってしまった場合、事業者に対して、その誤って支払った金銭の返還を請求することが可能です。」
消費者庁「送り付けに関するQ&A」A5
電話で承諾してしまった
事例3の女性は、約5万円の海産物を一度承諾し、数日後にやっぱりやめる、ということで電話でキャンセルしました。業者は「わかりました。またよろしく」と答えたのに、後日、代引配達で発送されていました。
電話で勧誘されて承諾した場合は、特定商取引法の「電話勧誘販売」に当たります。法定の書面を受け取った日から8日以内であれば、書面又は電磁的記録(電子メールなど)でクーリング・オフができます(同法24条1項)。法定の書面を受け取っていなければ、8日の期間は始まっていません。
母は電話で「やめます」って言ったんだけど、それじゃだめなの?
クーリング・オフの方法についてはいくつか考え方がありますが、原則としては、書面又は電磁的記録で行うことになっています。電話で伝えただけで終わらせず、はがきか電子メールで、改めて通知してください。はがきは両面の写しを、メールやメッセージならば、送信画面を残しておきましょう。
もっとも、事例3では、業者が「わかりました。またよろしく」と答えています。これをもって、契約を解除する合意が成立したと考える余地もあります。ただし、立証の問題がありますね。
店に届いた場合は、話が違う
で、個人の家に届いたやつはともかく、うちの店に届いたカニはどうなるんだ。
そこには注意が必要です。59条には2項があります。
「前項の規定は、その商品の送付を受けた者が営業のために又は営業として締結することとなる売買契約の申込みについては、適用しない。」
店が仕入れとして買う形の申込みであれば、送り付けの規定は適用されません。また、飲食店とかではなく、カニとは全く関係ないような業種であれば、「営業のために又は営業として」にあたらないので消費者と同じだと解釈することができそうです。
しかし、判断が分かれうるところなので、やはり、事業者の場合には、基本的には、受け取らない、受け取ったら保管して業者に引取りを求める、という対応になります。
なぜこの商法がなくならないのか
法律は、2021年の改正で整いましたが、それでも相談は年に4,000件を超えており、解決していません。
まず、返金の実効性です。59条・59条の2は、業者が商品の返還を求められないと定めるだけで、消費者が払った代金の返還を直接定めた規定ではありません。国民生活センター自身も、事業者と連絡が取れなくなるなど「被害回復が難しいケースもあります」と書いています。
次に、承諾の立証です。業者は必ず「電話で承諾した」と主張します。電話のやり取りは記録が残りにくく、高齢の消費者が「承諾していない」ことを示すのは容易ではありません。押し切られてしまい、しかたなく買ってしまい、泣き寝入りする人も出てくるでしょう。電話勧誘販売の業者に、勧誘の録音の保存を義務づけるというのもひとつの案ですね。
この点、電気通信事業法(インターネットのプロバイダ契約や光回線などの電話勧誘)では、「消費者保護ルール
に関するガイドライン」で、トラブルを避けるために録音することが推奨されています。
これは、もっと一般化されてもいいのではないでしょうか。
さらに、代引配達の仕組みです。代引では、消費者は中身を確かめる前に代金を払います。配送業者は運送を引き受けただけで、送り主の勧誘の当否を確かめる立場にないのです。
配送業者は、トラブルに巻き込まれたくないから「はやく代金払ってよ」くらいしか思ってないかもしれない。
高齢者が「こんな契約したかな・・・」と困っていたら、助けてくれればいいのにね。
不招請勧誘禁止、そろそろやりませんか
そして、もっとも重要かつ根本的な点だと思いますが、我が国は、「不招請勧誘禁止」、つまり、事前に訪問や電話による勧誘を断るというしくみがないことです。
特商法でも、一度「契約しない」と言った人への再勧誘は禁じられています(同法17条)。
しかし、電話勧誘そのものを事前に拒否できる登録制度(いわゆる Do-Not-Call)や、もっと厳しいオプトイン型の禁止のしくみ(消費者の要請・同意がない限り勧誘してはいけない、というしくみ。ドイツなどが有名です。)は、日本にはありません。
世界の情勢については、消費者法ニュースの「最新情報:世界の電話勧誘規制の現状─Do-Not-Call制度とオプト・イン方式の普及─」(薬袋真司)をお読みください。リンクを張っておきます(なお、全文は有料会員しか読めません)。
高齢者を狙った電話勧誘が毎年繰り返される以上、これは、検討してよい課題だと思います。
うーん、わかった。
とりあえず母には、「要らなければ、契約しませんって言って切っていい」って伝えておく。届いても受け取らなくていい、って。
それがいちばんです。相談は、お近くの消費生活センター(消費者ホットライン「188」)へ。もっと怖い、脅すような電話があれば、警察相談専用電話「#9110」へ。
参考資料
- 国民生活センター「海産物の購入を強引に勧める電話勧誘販売・送り付けトラブルに注意!」(2026年10月28日)
- 消費者庁「身に覚えのない自分宛ての商品が届いたあなた その商品、直ちに処分できます!支払も不要です!」(送り付けに関するQ&A)
- 消費者庁「特定商取引法の通達改正・一方的に送り付けられた商品に関するチラシ等の公表について」(2021年6月29日)
*本記事は、2026年10月28日に公表された「海産物の購入を強引に勧める電話勧誘販売・送り付けトラブルに注意!」に基づく一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。



