「飯田GHD子会社に課徴金4億円超命令 広告に「注文住宅No.1」―消費者庁」
時事ドットコム
時事ドットコム 2026.10.28
外部リンク:消費者庁「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」(2026年10月28日)
はじめに
「お客様満足度No.1」「3冠達成」。チラシやウェブサイトで、よく見かける表示ですよね。
2026年10月28日、消費者庁は、飯田グループの住宅会社4社に、合計4億4,116万円の課徴金納付を命じました。グループの持株会社が調査会社に委託した調査を根拠に、「No.1」と広告したことが、優良誤認表示とされたものです。
ふん・・・調査会社が1位だと言ったんだ。べつに、嘘をついたわけじゃない。
その点がまさに問題となります。
- 他人が行った調査を根拠にした「No.1」表示は、なぜ優良誤認表示になるのか。
- 調査を信じた業者は、それでも課徴金を免れないのか。
さて、先週は、依頼して書いてもらった「お客様の声」を自社サイトに転載した事案(ステルスマーケティング)の問題を取り上げました。まあ、そちらの表示にも優良誤認は含まれていたのですが、今回は、同じ景品表示法でも、優良誤認表示がもっぱら問題となる話題です。
事実関係の整理
まず、事実経過を整理しておきます。
- 2022年1月:飯田グループホールディングスが調査会社にアンケート調査を委託。「土地情報が豊富な注文住宅会社」「高品質なのにローコストな注文住宅会社」「初めて住宅を建てる方におすすめの注文住宅会社」の3項目について、調査会社から「No.1」のキャッチフレーズを使ってよいと通知を受けた。
- 2022年2月18日から3月26日まで(住宅情報館のチラシ)、2023年6月7日から9月20日までの間(他の3社のウェブサイト。各社で期間が異なる):グループ各社が、「3項目で顧客満足度No.1」「3冠達成」などと表示した。
- 2024年2月29日:消費者庁が、持株会社を含む5社に措置命令(景品表示法7条1項)。
- 2024年5月20日:5社が措置命令を不服として審査請求。
- 2025年11月11日:行政不服審査会が、審査請求を棄却すべきとの判断を「妥当」と答申。
- 2026年10月28日:消費者庁が、子会社4社に課徴金納付命令(同法8条1項)。
課徴金の額は、次のとおりです。
- 住宅情報館(相模原市):1億6,703万円(ポスティングチラシ)
- 一建設(東京都練馬区):1億2,439万円(自社ウェブサイト)
- アーネストワン(東京都西東京市):1億1,283万円(自社ウェブサイト)
- 飯田産業(東京都武蔵野市):3,691万円(自社ウェブサイト)
合計4億4,116万円で、納付期限は2027年5月31日です。課徴金は売上額の3%ですから、対象となった売上額は、4社で約147億円にのぼります。
課徴金の対象となる期間には、表示をやめた後の取引も含まれます。その期間は、住宅情報館が2022年9月26日まで、他の3社が2024年3月13日から19日までの間に終わっています。
4社の主な表示は、次のとおりです。
- 住宅情報館(チラシ):「飯田グループの注文住宅は3項目で顧客満足度No.1」
- 一建設(ウェブサイト):「飯田グループは皆様に選ばれて3冠達成!」
- 飯田産業(ウェブサイト):「飯田グループは皆様に選ばれて3冠を達成いたしました!」
- アーネストワン(ウェブサイト):「飯田グループは皆様に支えられて3つのNo.1を獲得しました。」「信頼の3冠獲得 第1位」
いずれの広告にも、3項目が、調査会社の名前とともに「No.1」「第1位」として並んでいました。消費者庁は、これらの表示が、実際に利用したことがある人や知見のある人を対象に調査した結果、3項目で1位だったかのように示すものだと認定しています。
No.1とか、第1位って書いてあったら、ついつい選んじゃうよね。
とくに、注文住宅は、一生に一度しかないくらいの高額な買い物です。答申も、一般消費者は判断の材料を十分に持っていないので、実際に利用した人の評価は「重要な判断材料となり得る」と述べています。
そういや、こないだBEN先生に勧められて読んだセイラーの本にも、家を買うような、めったにしない難しい選択ほど、経験がないから直感に頼ってしまう、という話が書いてあったな。
そうです。そういうときに「No.1」の表示はつい頼ってしまうわけです。
では、何が問題だったのでしょうか。答申によれば、もとの調査は次のようなものでした。
「事前調査は、本件3項目について、回答者に対し、審査請求人X1及びGoogleで「注文住宅会社」と検索して上位に表示された注文住宅会社9社の各ウェブサイトを閲覧させて、その印象を問うイメージ調査であり、同調査においては、回答者が実際に注文住宅会社を利用して注文住宅建築請負契約を締結した者であるかどうかは確認していなかった。」
令和7年度答申第54号(行政不服審査会)
つまり、家を建てたことがあるかどうかも分からない人に、10社のウェブサイトを見せて、印象を聞いただけです。
え・・・そんなひどい調査だったの・・・?
今回の課徴金納付命令も、同じことを認定しています。
「実際には、飯田グループホールディングスが委託した事業者による調査は、本件3項目について、回答者に対し、飯田グループが提供する本件役務及び他の事業者が提供する同種役務について実際に利用したことがある者か又は知見等を有する者かを確認することなく、飯田グループホールディングス及び特定9事業者(当該委託を受けた事業者が、同種役務を提供する事業者の中から指定する9の事業者をいう。)のみを任意に選択して対比し、各事業者のウェブサイトの印象を問うものであり、それぞれ客観的な調査に基づくものではなかった。また、前記⑴の表示は、当該調査結果を正確かつ適正に引用しているものではなかった。」
課徴金納付命令(別添1から別添4まで)別紙6⑵
規律の内容:No.1表示と課徴金
1. 優良誤認表示(景品表示法5条1号)
景品表示法5条1号は、次の表示を禁止しています。
「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」
そして、答申は、「著しく優良であると示す」表示を、次のように説明しています。
「表示の内容全体から通常の知識や情報を有する一般消費者が受ける印象又は認識と実際のものとの間に差異を生じさせるものであって、一般消費者に対して、社会一般に許容される誇張の限度を超えて商品等の優良性を示す表示」
令和7年度答申第54号(行政不服審査会)
「顧客満足度」「皆様に選ばれて」といった言葉を使っている以上、実際に家を建てた人の満足度で1位になった、という印象を持つよね。
ところが、実際は、「顧客」どころか、ウェブサイトの印象を聞いただけでした。だから優良誤認表示だ、というわけです。
いや、でも、まあ、それでもアンケートはちゃんと取ったんだろう。何がいけないんだ。
架空のアンケートならまあそりゃ問題があるだろうが。
アンケートを取ったか、ではなく、問題は、その実質ですね。
消費者庁の「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月)は、No.1表示が合理的な根拠をもつための要件として、次の四つを挙げています(17頁)。
- 「比較する商品等が適切に選定されていること」
- 「調査対象者が適切に選定されていること」
- 「調査が公平な方法で実施されていること」
- 「表示内容と調査結果が適切に対応していること」
そして、調査対象者についても、次のように述べています。
「少なくとも、対象商品等を実際に利用したことがある者でなければ、その商品等に満足したかどうかを適切に判断することはできないと考えられる。」
No.1表示に関する実態調査報告書19頁
たしかに・・・その会社で家を建てたことない人に聞いても、ぜんぜん意味ないよね。
2. 課徴金(景品表示法8条)
優良誤認表示をした事業者には、課徴金が課されます。額は、対象期間の売上額の3%です(8条1項)。
一応、これには例外が定められています。
「ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、又はその額が百五十万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。」
つまり、違法だと知らず、知らなかったことに「相当の注意」を尽くしていたと認められれば、課徴金は免除されます。今回も、ここが問題になりました。
もう一つ、見落としやすいのが期間です。課徴金の対象期間には、表示をやめた後も、その日から6か月を経過する日までの取引が含まれます(8条2項)。誤認を解消する措置をとれば、その日で区切られます。
どこからが違反か:調査の「中身」と「使い方」
むずかしいね。どこからが違法になるんだろう。
アンケートなんかやり方次第でいろいろなことが言えちゃうんだよね。
1. 調査対象者:利用したことがない人
本件の調査は、回答者が注文住宅を建てたことがあるかを確認していませんでした。満足度やおすすめを語れるのは、実際に利用した人です。利用経験を問わない調査を、「顧客満足度」の根拠にすることはできません。
2. 比較対象:検索上位の9社
比較したのは、グーグルで「注文住宅会社」と検索して上位に出た9社でした。
比べる相手を選ぶのは、こっちの自由だろう。
自由ではありません。「No.1」と表示すれば、消費者は、同業者の中で一番だと受け取ります。比べる相手を恣意的に選べば、いくらでも1位になれてしまいます。
3. 表示と調査結果の対応:「イメージ」を「満足度」と書く
調査はウェブサイトの「イメージ調査」でしたが、表示は「顧客満足度No.1」でした。調査で聞いていないことを、広告で言ってしまっています。
ちなみに、表示の下には「サイトのイメージ調査」といった注記が付いていました。しかし答申は、注記を次のように評価しています。
「いずれも本件各表示より相当程度小さい文字で記載されており、一般消費者の目に留まりやすいものであるとはいい難い。」
令和7年度答申第54号(行政不服審査会)
注記を付ければ足りる、というものではありません。
4. 後から調査し直しても、質問の作り方で否定される
さて、対象事業者は、措置命令の前後に、実際に注文住宅を建てた人を対象にアンケートをやり直して、そこでも1位だったと主張しています。
しかし、答申は、選択肢に販売戸数や平均建物価格を添えた質問は、回答をその会社へ「誘導するもの」だとして、結果をそのまま採用しませんでした。調査をやり直すにしても、聞き方が公平でなければ根拠になりません。
「相当の注意」:調査会社任せは通らない
あとさあ、親会社が持ってきた調査というのも気になるよな。
実際、子会社には、親会社の意向に逆らえないだろう。
4社は、それぞれ自分の名前で広告を出しています。消費者庁は、次のように述べています。
「4社は、いずれも、本件役務について、前記⑵ウの表示の根拠とされる調査結果が、客観的な調査に基づくものであるか、また、当該調査結果と表示内容が適切に対応しているかについて十分な検証を行うことなく、前記⑵の課徴金対象行為をしていた。」
消費者庁公表資料(2026年10月28日)2⑷
そのうえで、各社の命令は、4社とも、表示が優良誤認表示に当たることを「知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないとは認められない」として、課徴金の免除を認めませんでした。
なるほどね。
子会社だから、というのは言い訳にならないんだね。
そのとおり。例えば、住宅情報館は、命令の認定によれば、チラシの表示内容の決定を、持株会社に「委ねている」とされています。他の3社は、持株会社と「共同して自ら決定している」とされています。表示の中身を親会社に任せていた会社も、自ら決めていた会社も、同じく課徴金を課されたのです。親会社に任せていたことは、免除の理由になりませんでした。
答申の中に出てくる審理員の意見によれば、調査会社の報告書には、もともと次のように書かれていました。
「イメージ調査です。/利用有無は聴取しておりません。」
令和7年度答申第54号(行政不服審査会)に引用された審理員意見
さらに、グループが比較対象の9社を明らかにするよう求めても、調査会社には拒否されていたといいます。
審理員は、このように、いかにもアヤシげな点があったのに、それを承知で広告に使ったのはグループ自身だとして、帰責性が低いとはいえないとしました。
消費者庁の実態調査報告書も、根拠の確かめ方について、次のように述べています。
「No.1 表示等の根拠を確認する際は、単に、第三者機関による調査が実施されていることのみを確認するだけでは不十分であり、調査内容が表示内容と適切に対応しているかどうかなど、自らの責任において当該 No.1 表示等が合理的な根拠を有しているといえるかを確認する必要がある。」
No.1表示に関する実態調査報告書25頁
また、報告書は、調査会社が調査をしていたとしても、不当なNo.1表示の責任は広告主にあることを、改めて呼び掛けるとしています(26頁)。
調査会社任せはだめだよ、ということなんだね。
誰が「No.1」の責任を負うのか
措置命令から2年半以上たってから、また金を取るのか。
課徴金は、措置命令とは別の処分です。
いずれも同じ表示についての処分ですが、措置命令は再発防止のため、課徴金は、不当な表示によって得た不当な利益を取り上げるものです。
まず、課徴金の額は売上額で決まります。住宅のように単価の高い取引では、表示の期間が短くても、売上額は大きくなります。本件でも、表示期間は数か月でしたが、売上額は4社で約147億円、課徴金は4億円を超えました。算定率は3%で、過去10年以内に確定した課徴金納付命令を受けていた場合の割増(4.5%、8条5項)は適用されていません。
処分までの時間も重要です。表示の開始(2022年2月)から課徴金納付命令まで、4年8か月がたっています。審査請求の手続があったとはいえ、これだけ時間がかかれば、他の事業者への抑止の力は弱まってしまいます。これはもう少しなんとかならなかったのかと思いますね。
また、持株会社の扱いですが、調査を委託し、措置命令も受けた持株会社は、課徴金の対象になっていません。表示の中身を決めた主体が課徴金を負わないのはなぜでしょうか。ちょっとわかりませんね。
そして、調査会社の責任も不明確です。景品表示法は、表示をした事業者を規制する法律ですので、表示主体ではない調査会社は処分の対象になりません。調査会社の中には、1フレーズ10万円から数十万円程度で調査を請け負い、「1位が獲れるまで追加費用なしで再調査する。」といった文句で勧誘しているものもあったといいます。「No.1」を売り物にする調査会社がある以上、広告主への注意喚起だけでは足らないのではないでしょうか。
事業者のみなさんへ
- 自社のチラシ・ウェブサイト・店頭・SNSに、「No.1」「第1位」「満足度○%」「○冠」「選ばれている」という表示はありませんか。確認してください。
- 表示ごとに、根拠となる調査報告書を取り寄せ、少なくとも次の4点を確かめてください。
①比べた会社・商品は何か、市場の主要なものが入っているか。
②回答者は実際に利用した人か。
③調査の方法と時期。
④広告の文言が調査結果の範囲を超えていないか。 - 調査会社から「No.1」の提案を受けたら、費用を払えば1位がもらえるというしくみになっていないかを確かめてください。契約書には、調査方法と比較対象の開示を書き込んでください。
- 親会社などから渡された広告素材でも、自社の名前で出す以上は自社の表示です。根拠資料も一緒に受け取り、自社で確認した記録(確認日、確認者、確認した資料)を残してください。親会社から言われたから、では、通用しません。
- 根拠に疑いが出た表示は、すぐに止めて、止めた日を記録してください。課徴金の対象期間は、一定期間、表示をやめた後の取引まで含みます。
- 迷ったら、表示を出す前に弁護士に相談してください。
参考資料
- 消費者庁「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」(2026年10月28日)
- 消費者庁「飯田グループホールディングス株式会社ほか4社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2024年3月1日)
- 行政不服審査会「令和7年度答申第54号」(2025年11月11日)
- 消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」(2024年9月26日)
- 消費者庁「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」公表資料(PDF。課徴金納付命令書を含む)
*本記事は、2026年10月28日に公表された「注文住宅の建築請負に係る役務の提供事業者4社に対する景品表示法に基づく課徴金納付命令について」に基づく一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。


