「布団乾燥機宣伝に措置命令、ダニ対策や殺菌効果根拠なし 消費者庁」
日本経済新聞
日本経済新聞(共同) 2026.10.20
外部リンク:消費者庁「株式会社giobaiに対する景品表示法に基づく措置命令について」(2026年10月20日)
はじめに
自社の通販サイトに「お客様の声」の欄を設けている事業者は多いと思います。InstagramやXの投稿を抜き出して「SNSでも大人気」と並べるのも、よく見る作りです。
2026年10月20日、消費者庁は、布団乾燥機「FLEURISTE(フルリスト)」を販売する株式会社giobaiに、景品表示法に基づく措置命令を出しました。違反とされたものの一つが、商品を無償で提供し、対価も払って書いてもらった投稿を、そのことを示さずに自社サイトへ転載した表示です。
ステマ(ステルスマーケティング)規制については、このブログでも2度(厳密にいえば、ステマがまだ違法化される前にも取り上げたのですが、それはさておき)取り上げました。2021年11月の、優良誤認としての初めての措置命令と、2023年の、ステマ告示の制定です。
今回は、その運用の具体例です。
ふん・・・お客さんの感想を載せてるだけよな。何がだめなんだ?
お客さんの感想は大事だろ?
もちろん、感想を載せることそれ自体が問題なのではありません。
問われるのは、その「お客様の声」が誰の表示か、です。
事案の概要
消費者庁は、giobaiの表示について、2つの違反を認めました。
- 優良誤認表示(景品表示法5条1号)
- 自社ウェブサイトで、「ダニが死滅する50度まで 急速に熱し、乾燥させる」「\アロマ成分配合した/ ダニ忌避作用」などと表示しました。
- 表示期間は、令和6年7月11日から9月26日まで、同年12月7日、同年12月8日から16日までです。
- 消費者庁は、7条2項に基づき、裏付けとなる資料の提出を求めました。giobaiは資料を出しましたが、合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。
- ステマ告示違反(同法5条3号)
- 第三者に対し、商品の無償提供と対価の提供を条件に、Instagramへの投稿を依頼しました。
- その投稿の一部を抜き出して、自社ウェブサイトに「User’s Voice SNSでも大人気」「布団干すの やめました おしゃれで 家事ラク」などと表示しました。
- 表示期間は、令和6年7月11日から10月2日まで、同年10月3日から12月6日までです。
さて、ステマ告示違反について、措置命令は次のように認定しています。
「giobaiは、本件商品に係る同表「表示内容」欄記載の表示内容の決定に関与しているものであり、当該表示は事業者の表示であると認められる。」
「第三者が投稿した表示について、giobaiが当該第三者に対して依頼した投稿であることを明らかにしておらず、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められない」
措置命令(別添2)2⑶ア、イ
命令の内容は、①違反であることの一般消費者への周知徹底、②再発防止策を講じて従業員に周知徹底すること、③今後同様の表示をしないこと、④消費者庁長官への文書による報告です。
なお、表示は2024年(令和6年)、命令は2026年10月です。命令まで約2年かかっています。
へえ・・・でも、SNSで大人気って書いてあったら、消費者としては信じちゃうよね。
そうです。以前も書きましたが、手軽に獲得できてしまう「信頼」の大きさが、このステマ規制の出発点です。
ステマ告示の規律
さて、おさらいになりますが、景品表示法5条3号は、内閣総理大臣が指定する表示を不当表示として禁じています。
「前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」
これに基づく告示(令和5年内閣府告示第19号)が、いわゆるステマ告示です。対象となる表示は、次のとおりです。
「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」
要件は2つです。
- 事業者の表示であること
- 一般消費者が、事業者の表示であることを判別することが困難であること
なぜ広告であることを隠すと問題なのか。運用基準は、その理由をこう説明しています。
「一般消費者は、事業者の表示であると認識すれば、表示内容に、ある程度の誇張・誇大が含まれることはあり得ると考え、商品選択の上でそのことを考慮に入れる」
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(令和5年3月28日消費者庁長官決定)第1
いや、でも、インスタの投稿は投稿者が書いたんだろ。
なんでそれが事業者の表示になるんだ?
運用基準は、第三者の投稿に見えるものでも、事業者の表示になる場合があるとしています。
「外形上第三者の表示のように見えるものが、事業者の表示に該当するとされるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合である。」
運用基準 第2
そして、その典型として、事業者が第三者に依頼して、そのSNSに自社商品の表示をさせる場合を挙げています(第2の1⑵ア)。明示の指示がなくても、商品を無償で提供して投稿を依頼し、第三者が事業者の方針に沿った表示をしたときは、事業者の表示とされます(同イ(ア))。本件は、無償提供に加えて対価も払っていました。
自分の店のサイトに載せてるんだから・・・・広告なのは、まあ、誰でも分かるんじゃないのか?
鋭いですね。たしかに、運用基準は、事業者自身のウェブサイトでの表示を、事業者の表示であることが明らかな例に挙げています(第3の2⑵オ)。しかし、すぐ後に例外があります。
「ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。」
運用基準 第3の2⑵オ(ア)
「お客様の声」欄は、自社サイトの中にあっても、第三者の客観的な意見に見えてしまうので、気をつけなければならないのです。
どこからがステマか
簡単なケースから、迷いそうなケースまで、いくつか例をあげてみます。
1. 依頼し、対価を払った投稿を、そのことを示さずに転載する
本件はこれにあたります。事業者の表示であり、判別も困難なので、違反になります。一番わかりやすいですね。
2. 依頼していない投稿を、選ばず、変えずに転載する
運用基準は、自社サイトで第三者の表示を使っても、事業者の表示にならない場合を挙げています。
「事業者が自社のウェブサイトの一部において、第三者が行う表示を利用する場合であっても、当該第三者の表示を恣意的に抽出すること(例えば、第三者のSNSの投稿から事業者の評判を向上させる意見のみを抽出しているにもかかわらず、そのことが一般消費者に判別困難な方法で表示すること。)なく、また、当該第三者の表示内容に変更を加えること(例えば、第三者のSNSの投稿には事業者の商品等の良い点、悪い点の両方が記載してあるにもかかわらず、その一方のみの意見を取り上げ、もう一方の意見がないかのように表示すること。)なく、そのまま引用する場合。」
運用基準 第2の2⑴キ
へえ・・・「個人の感想です」って書いてもだめなのか?
健康食品とかでよくあるじゃないか。
そうですね。だめです。
好意的なものだけを選んだうえで、そのことが分からない形で載せたり、良い点だけを切り取るのもやっぱりだめですね。
ただし、訓練された消費者としては、すこしは悪い感想も載ってるほうが、かえって信用できるかもしれないという気もするよね。
3. 口コミを書いた購入者に割引券を出す
また、ECサイトのレビュー機能への投稿の謝礼として、次回の割引券などを配るケースなどもありますが、これはどうでしょうか。
運用基準は、投稿内容について事業者と購入者の間で「情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず」、購入者が自主的に内容を決めたと認められるなら、事業者の表示にならないとしています(第2の2⑴オ)。
口コミ書いてくれた人に割引券を出すのもOKなのか?
もちろん、口コミの内容に一切口を出さないことが前提です。「星5つで」「この点に触れて」と頼めば、事業者の表示になります。
でも、なにかお金もらっちゃうと、人間としては、あんまり悪いことはいえないような気もするよね・・・どうなんだろ。
4. 「依頼」を明瞭に示して転載する
また、仮に事業者の表示であっても、一般消費者にそれが明瞭であれば、告示の対象ではありません。さきほどの2つ目の要件ですね。
例えば、運用基準は、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の文言や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章を例に挙げています(第3の2⑴)。自社サイトについては、「弊社から○○先生に依頼をし、頂いたコメントを編集して掲載しています。」という書き方が示されています(第3の2⑵オ(イ))。
ただし、運用基準は、表示の末尾に置く、周囲より小さな文字で書く、薄い色にする、といった方法では明瞭とはいえないとしています(第3の1⑵オ〜キ)。
XのPR表示とかって、右肩に小さくあるだけだし、普通の投稿と区別がつかないようになってるけどね・・・あれもどうなんだろね。
裏付けのない効果の表示(不実証広告)
さて、少し話がかわりますが、この命令には、ステマ違反だけでなく、もうひとつ違反が含まれています。ダニの死滅や忌避の効果をうたった表示です。
景品表示法7条2項は、次のように定めています。
「内閣総理大臣は、前項の規定による命令(以下「措置命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。」
でも、ダニの試験はちゃんとやって、資料も出たんじゃないのか?
たしかに、この条文は「提出しないとき」と書いています。しかし、消費者庁は、提出した資料が合理的な根拠を示すものと認められない場合も、同じく不当表示とみなすと説明しています(本件の公表資料:参考2)。giobaiの表示には試験機関の名前も書かれていましたが、それでも根拠とは認められませんでした。
この「不実証広告規制」の概要については、「クレベリン」の措置命令のときにも書きました。コロナで一世を風靡したアレです。
つまり、試験をしたからといって、その試験が表示を裏付けるものでなければだめなわけです。当たり前ですが。不実証広告規制の運用指針(「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」)は、資料が客観的に実証された内容であること、表示された効果と資料の内容が適切に対応していることを求めています。
口コミ「転載」の落とし穴
さて、ステマの話に戻ります。
実は、本件は口コミ「転載」事案ですが、これは、事業者が陥りがちな落とし穴なんです。
転載「先」の自社サイトの表示が問題となったわけですが、転載「元」の投稿に「PR」などの表示があったかどうかは定かではありません。仮に元の投稿に書かれていても、抜き出すときに外せば、自社サイト上では依頼した投稿であることが分からなくなります。サイト構築の委託業者が見落としがちなポイントです。
また、運用基準のキの例外は、「第三者の自主的な意思による表示」を前提にしています。依頼して書いてもらった投稿には、そもそも当てはまりません。キを「そのまま引用するんだったら大丈夫」と読むのは誤りです。
2026年6月29日にも、消費者庁は、高光製薬株式会社が第三者のSNS投稿を抜き出して自社サイトに「SNSでも大人気!」と表示したことについて、ステマ告示違反の措置命令を出しています。
課題:課徴金の対象外
なお、本件では、表示から命令まで約2年かかっていますが、ステマ告示違反は課徴金の対象になりません。景品表示法8条1項は、課徴金の対象を「第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。)」としています。ステマはこの3号ですね。2年間、違法な表示でお金が儲けられる、ということになってしまいます。ステマ告示違反を課徴金の対象に加えることも検討されるべきでしょう。
「PR」「広告」って書いてあれば、そこに書いてあることは割り引いて考えるから、消費者は、しっかり判断できるよ。
とにかくいいことばっかりかけばよい、というのは消費者をバカにしてるよね。
事業者にできること
この件を教訓として、次のようなことが考えられます。今日から実践を。
- 自社サイトの「お客様の声」「口コミ」「SNSで話題」の出所を確かめてください。商品を無償で渡した相手、謝礼を払った相手、投稿を頼んだ相手の投稿、はたまた架空のものが混じっていませんか。
- 依頼投稿を載せるなら、「当社が商品を無償で提供し、投稿を依頼したものです」と書いてください。文字を小さくしたり、頁の末尾にまとめたりしてはいけません。
- 依頼していない投稿を載せるときも、好意的なものだけを選ばず、また、切り取ったりしないでください。社内で選び方の基準を決めておきましょう。
- いわゆるインフルエンサーや紹介業者との依頼書・契約書には、投稿に「PR」などと表示すること、投稿文を指定するかどうか、対価の内容を書いて、保存してください。広告主には、これらを管理する義務があります。
- 効果の表示は、確固たる裏付けがないならしないほうがいいと思います。もしするなら、資料をきちんと準備してください。
- 広告・表示の管理規程を作り、表示等管理担当者を決めてください。依頼投稿の扱い、転載の基準、効果の表示の根拠資料の確認と保存の手順を書いておきます。
ふむ、なかなかきびしい時代だぜ・・・
そうなんです。6は、景品表示法22条1項が求める「管理上の措置」です。
同項は、事業者に、表示に関する事項を適正に管理するため「必要な体制の整備その他の必要な措置」を講じることを求めています。これを具体化したのが「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」で、景品表示法の考え方の周知・啓発、法令遵守の方針等の明確化、表示等に関する情報の確認と共有、表示等管理担当者の選任、表示等の根拠となる情報を事後的に確認するための措置、不当な表示等が明らかになった場合の迅速かつ適切な対応を示しています。表示の作成を広告代理店などの他の事業者に委ねる場合は、その事業者にも周知・啓発や方針の明確化を行うことが求められます。
業者に丸投げすればオッケー、というわけではないんだね。
なお、指針は、小規模な事業者では、社内規程を明文化しなくても、法令遵守の方針等を従業員が認識していれば足りる場合もあるとしています。それでも、依頼投稿や転載など、落とし穴がおおいところは、きちんと書いておくほうが確実ですね。
参考資料
- 消費者庁「株式会社giobaiに対する景品表示法に基づく措置命令について」(2026年10月20日)
- 同 公表資料(PDF)
- 消費者庁「高光製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(2026年6月29日)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(告示・運用基準)
- 「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(令和6年4月18日改正)
*本記事は、2026年10月20日に公表された「株式会社giobaiに対する景品表示法に基づく措置命令について」に基づく一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。



