ステマ(ステルスマーケティング)についての初の措置命令

サプリ飲むだけで「胸大きく」、SNSで「ステマ」指示…消費者庁が措置命令

https://www.yomiuri.co.jp/national/20211109-OYT1T50222/
読売新聞 2021.11.9

はじめに:ステマ(ステルスマーケティング)とは

ずいぶん、ひさしぶりの更新だね・・・

なんだか、そういえば、去年(2020年)も、この時期、全然更新してなかったような・・・

そうだな、なかなか忙しいのかもしれんな。

そういえば、今年のはじめごろにちょっと話題になった「レスキュー商法」だっけか、水回りとか鍵開けで、お客さんの弱みにつけこんで高いお金をとる商法。

あれは、全国でも逮捕者が出たり、裁判がおきたりと色々動いているようだな。

おっしゃるとおりです。そんなこともあり、なかなか忙しくて・・・

これから、また記事書いていきますよ。よろしくお願いいたします。

ちなみに、レスキュー商法についての最近の動きは、レスキュー商法の弁護団のウェブサイトでまとめてますので、またそっちを、みてくださいね。

外部リンク:レスキュー商法被害対策京都弁護団ウェブサイト

今回の記事は、「ステマ」がテーマです。

なんだか、今回の記事こそ、ステマっぽい始まり方してるんだけど・・・大丈夫?

そ、そんなことないですよ。

この弁護団のウェブサイトを作成しているのは私ですし、私が、私のサイトの宣伝をするのは別にステマではないです。

問題は、広告主との関係性を明らかにしないで(他人のふりをして)広告をすること。

これがステマですね。

さて、以前、レスキュー商法のリスティング広告の問題を指摘する記事でも、さいごに、ちらっと、ステマの問題をとりあげました。

内部リンク:水回り、鍵開けレスキュー商法と「リスティング広告」

では、もう一度、復習です。

消費者庁は、2011年に示した指針で、いわゆる「口コミサイト」におけるステマが景品表示法の優良誤認もしくは有利誤認にあたる場合がある、としていますが、ステマそのものが問題である、という姿勢はとっていないようです。

外部リンク:消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」

この中にPDFファイルとしてありますね(直リンクはこちら)。

要するに、たんに、広告主または広告主と関係がある人なのにその関係を隠して「これいいです!おすすめです!」って言っているだけでは、問題にはならない。

ステマだというだけではただちに景品表示法に違反するとはいえない、というのが消費者庁の立場なんだな?

そうです。

では、これを前提に、冒頭の読売新聞の記事を読んでみましょう。

ステマに対してはわが国初となる景品表示法に基づく措置命令です。

ステマについての初の措置命令

ふむふむ、バストアップをうたうサプリの販売会社が、アフィリエイターに対して、インスタグラムとかアフィリエイトサイトで「バストアップ」「胸大きく」など特定のハッシュタグを付け、サンプル品だと明かさずに投稿するよう指示していた、と。

コンプレックス商法っていうやつだね。

具体的には、どんな広告をしてたんだろ?

実際の広告文言とかは、わからないのか?

消費者庁のウェブサイトに措置命令が載っていますので、みてみましょう。

外部リンク:消費者庁「株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について

たとえば、こんな文言がありますね。

『バスト育ちすぎてヤバい!?』バストアップ&美容ケアの W効果で簡単に巨乳メリハリボディになる裏技解禁!」
・人物の胸部の画像と共に、「巨乳になっちゃう!?」、「『バス トずっと貧乳.』『AAAカップすぎてブラ意味ない!』『身体にメリハリなし!』」、「そんな女子たちが最近話題の方法で『巨乳メリハリボディ』成功者続出しているんです!SNSでもバズッて、モデルやインスタグラマーがバスト激変しまくり!」及び人物の胸部の比較画像と共に、「『そんな夢みたいなことある!?』」

そんな短期間で「バスト激変」しまくったら、ぎゃくに怖いと思うんですけど・・・

こんなの信じる人、いるの?

もはやネタだよねえ。

インターネット広告は「ネタ」でも目に留まれば勝ち

そうでしょうか。

たとえば、少し脱線しますけども、最近のインターネット広告は、もっとエグいのがありますよね。

口の中の汚れとか、「まるで〇〇のにおいがする・・・」とか、なんというか、思わず目をそむけたくなるような写真やセールストークが使われているものとかありますよね。

わざと、嫌悪感をさそう広告です。

そうだな、SNSとか無料ゲームに出てくる広告とかに多いよな。

あれは、いったい何なんだろうな?

あんな写真とか出しちゃうと、かえって、その商品に対して悪いイメージがつくのではないか?とすら思うな。

いやいや、好きの反対は無関心、という言葉がありますが、やはり、広告の世界でも、関心を持ってもらえればなんでもよいのだ、という発想があるのだと思いますよ。

「なんだこれ、気持ち悪い・・・」と思っても、印象に残らないよりはずっとましなのです。

もちろんこんなのは倫理的には大問題だし、こんな広告を使う広告主には絶対にお金を払いたくないものです。

最近はやりの、いわゆる国際ロマンス詐欺も同じですね。

とにかく、話は、派手で、もう荒唐無稽なほうがいいのです。

夫がオオアリクイに殺されて・・・とか、そんな感じ?

まあ、ちょっと違いますが・・・

ともかく、最初は、みんな「なにこれ?こんなことあるわけない。」「ネタだわ。」と思うわけです。

でも、いつのまにか、話を聞いているうちに、「ネタ」であるのものが「ネタ」でなくなり、ハマっていくわけです。

これは、おそらく、心理学的に、とても綿密に研究されたやり口なんだと思いますね。

ふむふむ、広告は、やりすぎくらいがちょうどいい、と・・・

なるほど、なかなか勉強になるな。

SHOさん、ダメです、決して悪用しないでくださいね。

景品表示法違反(優良誤認、不実証広告)

というわけで、この件では、「豊胸効果がないのにあるようにうたった」ということで、優良誤認表示(景品表示法第5条1号)とされ、措置命令が出たわけです。

景品表示法第5条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
① 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

あのさあ、この措置命令を読んでてよくわからないんだけど、このサプリに「豊胸効果」があるかどうかは、わからないんだよね。

消費者庁が効果の根拠を明らかにせよ、といって、回答しなかった、というのはあるけれど。

それだけで、「豊胸効果がないのにあるようにうたった」(優良誤認)といえるのかな?

はい。良い質問ですね。

これは、景品表示法の優良誤認については、「不実証広告規制」(景品表示法7条2項)というものがあります。

次の条文をみてください。

景品表示法第7条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第5条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においても、次に掲げる者に対し、することができる。
① 当該違反行為をした事業者
② 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し、又は合併により設立された法人
③ 当該違反行為をした事業者が法人である場合において、当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
④ 当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
 内閣総理大臣は、前項の規定による命令に関し、事業者がした表示が第5条第1号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

ふむ。

その商品の性質とか効果についての資料ってのは、よく考えたらその業者しか持ってないもんな。

求められたのに資料提供しない場合には、広告が実際の商品の性質よりも著しく優良だということを認めたようなもんだ、ということか。

ということで、消費者庁は、不実証広告規制の条項(景品表示法7条2項)を用いて、優良誤認だとして措置命令(同条1項)を出したわけですね。

なぜステマだといえるか?

それよりも、おれが気になるのは、これが、なぜステマだといえるかだな。

つまり、このアフィリエイターだかインフルエンサーだか知らないが、SNSの投稿やブログのエントリをかいた人は、ほんとうに、広告主と一緒にやった、あるいは、広告主から指示を受けた、といえるのか?

自分で考えて投稿したのかもしれないじゃないか。

その点は、消費者庁は、このように事実を認定しているようです。

引用元:消費者庁「株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する
景品表示法に基づく措置命令について」
の商品「ジュエルアップ」の取引についての措置命令

ふうん。

途中で出てくる、アフィリエイト・サービス・プロバイダーというのがよくわかんないけど、とにかく、アフィリエイトサイトの表示内容を広告主が決めていた、というのがポイントなんだね。

どうやってそれがわかったんだろう?

そこまでは、書いてませんね。

アフィリエイト・サービス・プロバイダーは、ASPとも略されていますが、広告主はそこを通じて、アフィリエイターにアフィリエイトサイトへの広告掲載を要請し、アフィリエイターは成果を上げれば報酬を受け取ります。

ASPは、建前としては、アフィリエイターにステマを禁止したり、あるいは、広告主に対して、アフィリエイターに対してステマなどの誤解を招く広告をしないように、という禁止事項を設けているようですが、本件のような事案をどこまで防止できているのかは、わかりません。

おそらく、ASPのなかでも、ゆるいところ、あるいは、本件のような問題のある広告を黙認しているようなところもあるのではないかと思われます。

う-ん、アフィリエイトの世界でも、やはり「デジタル・プラットフォーム」が大きな存在になっているのか。

リスティング広告のはなしのときに、SSPとかDSPというプラットフォームの話をきいたが、なんだか、この業界も、プラットフォームばっかりだな。

ステマそのものを規制すべきではないか

さて、この消費者庁の措置命令も、「ステマだから」という理由で景品表示法違反を認めたものではなく、2011年の「留意事項」からなにか姿勢がかわっているわけではありません。

しかし、この10年で、インターネット広告をとりまく状況は、激変しました。

以前も書きましたが、ステマは、なぜ用いられるのか。それは、自社と関係のない第三者が商品を褒めるという効果を狙っているからです。そして、インターネット上のインフルエンサーは、単なる第三者ではありません。消費社会においては、そこらの科学者や専門家などよりもさらに大きな「権威」なのです。

そろそろ、ステマ自体を規制するべき段階にきているのではないでしょうか。


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院客員教授(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

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