「ダークパターン規制強化へ 悪質広告や煩雑な解約対象 消費者庁、特商法改正を視野」

福島民報 2026.8.25

https://www.minpo.jp/articles/-/211532

今朝の新聞(共同通信記事)にコメントしました

今日8月25日の地方紙朝刊22面に、消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ(案)」についての記事が出ました。といっても、そのうち、ダークパターンについてがメインですが。

有料記事で見れないんだけど・・・、なんて言ったの?

3つです。
・悪質な事業者は法令やガイドラインを研究したうえで、その隙を突く形で画面を作ってくる。
・いまの議論は「最終確認画面」に寄りすぎている。
・だから規制の対象をもっと手前まで広げて、取消権の対象とすることも検討してほしい。

ダークパターンの例は、紙面の図に4つ並んでたな。わかりやすかった。

会員登録を強制する、重要な情報を見えにくく隠す、広告と分からないものをクリックさせる、登録解除を難しくする。これまでは特商法や景表法で一部を制限してきたけれど、これからは包括的に規制する、と。

これっていい方向なんじゃないのか?

分かりやすく整理してるとは思いますよ。

ただし、コメントしたように、ダークパターン規制については、まだすこし不満が残ります。

そうそう、記事に例の「DAZN」のやつも出てたね。

はい。DAZNの「サッカープラン」について、年間契約なのに月額料金のほうが目立つ表示になっていて批判が集まり、同社が謝罪した件ですね。6月にもこのブログで取り上げて、私も取材でコメントしました。

では、あのDAZNのやり方は、今回の案で、防ぐことができるのでしょうか。

8月24日の中間とりまとめ案の内容

消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」の第8回で、中間取りまとめ(案)が示されました。

これを一緒にみていきましょう。

外部リンク:消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」

この先、最終的な取りまとめ、法案、成立、施行、ガイドライン、と続きますから、実際に、規制が変わるのはもう少し先ですね。報道によれば、消費者庁は、来年の通常国会への改正案提出を目指しているとのことでした。

ざっと、どんなことを言っているんだ?

これまで、特商法は、インターネット取引についての規制が立ち遅れていました。なんといっても、条文が「通信販売」ですから、これでインターネットを思い浮かべる人はあんまりいないかもしれません。

まず、注目すべき1点目が、SNSのDMやチャットでの個別勧誘。ここは電話勧誘販売と同じ土俵に上げられ、クーリング・オフも取消権もつきました。

まあ、内閣府消費者委員会からはもう4年も前から「やれ」って言われてたことなので、正直、これは遅すぎですね。


2点目が、ダークパターンです。これを中心に、本日は、内容をみていきましょう。

そのほか、このブログでもよくとりあげてきた「レスキュー商法」についても改正点があり、これについてもお話したいのですが、これはちょっと別稿、ということでで・・・

チャット等には電話勧誘販売なみの規制が

さて、ダークパターンにいく前に、1点目のチャット等勧誘についてかんたんにみておきます。チャットをきっかけに勧誘をする手法の規制ですね。

ここでは、新しい概念として「チャット等」が定義されます。スマホやPCの画面を通じた、特定の相手方に対する、双方向のやり取りのための文字情報等の送信、ということで、画像や動画も入りますし、Zoom等のURLを貼り付けてオンラインセミナーをすることなども入ります。

SNSのDM、チャットだけでなく、電子メールもSMSも含めるというふうに明記されたんだね(中間とりまとめ案5頁、脚注4)。

え? メールがぜんぶ規制されるのか?

そうなったら商売あがったりだぞ。

そこは、配慮されていて、例えば返信できない一斉DMや、単発のポップアップのように双方向のやり取りを一切想定しないものは、それだけでは対象にならない、とされています。

逆に、勧誘目的を隠して、あるいは著しく有利な条件をちらつかせて消費者側からチャットを開始させた場合などは、対象になります。無料相談からメッセージアプリに誘い込む、あのパターンですね。

規制内容は、「電話勧誘販売」と同等の規律が並ぶと思って下さい。たとえば、以下のような感じです。

  • 勧誘に先立って、事業者の氏名・名称、勧誘者の氏名、商品役務の種類、販売目的を告げる義務
  • 不実告知・事実不告知の禁止、威迫困惑の禁止
  • 断った後の再勧誘の禁止(別アカウントを使った継続も同じ)
  • 書面を受領した日から起算して8日間のクーリング・オフ
  • 不実告知等で契約した場合の取消権、過量販売の場合の解除権

勧誘者の氏名って、本名なの?

「戸籍上の氏名を告げるべきことを基本とする」(中間とりまとめ案、6頁、脚注9)

なんかやだな、通称姓使ってる人もいるのに・・・。

そうですね、ここは、反対意見も併記されていますね。

ダークパターンの「5類型」

さて、いよいよダークパターンについてです。

ダークパターンって、中間とりまとめ案の「参考資料」に5つ並んでたよね。

中間とりまとめ案・参考資料集の「参考11」ですね。

  • ①インターフェイス干渉・こっそり
  • ②社会的証明
  • ③緊急性
  • ④執拗な繰り返し
  • ⑤キャンセル困難

このリストは、OECDの7分類をベースに、消費者庁が事例を整理したものです。

中間とりまとめ案では、入口の広告場面については、つぎの3つの「型」で整理されています。

  1. 誤認を招く表示・UI(取引条件型)
    支払金額(違約金等を含む)、分量、契約期間といった契約の核心的な要素について、一般的な消費者が通常の注意をもって見たときに、内容を正確かつ容易に認識できない虚偽・不明瞭な表示・UI。
  2. 誤認を招く表示・UI(商品情報型)
    口コミ、利用状況、在庫情報、タイムセールなど商品の性能・内容に関連する情報で、その内容が虚偽である表示・UI。
  3. 攻撃的な表示・UI
    操作の反復や威迫的な文言等を用いて、迷惑を覚えさせ、または不安を生じさせるような仕方で申込み・締結をさせようとする表示・UI。

加えて、広告なのに広告と判別しがたい表示について、禁止するか、広告である旨の明示を求めるべきだ、としています。いわゆるステマ禁止ですね。

1番って、まさにDAZNがやったやつじゃない?

そのとおりですね。「980円」を巨大に記載して、「年間プラン」「総額2万6,340円」を視覚的にわかりにくくする設計は、「正確かつ容易に認識できない不明瞭な表示」の典型例になると思います。文字として書いてあるかどうかではなく、認識できるかどうかで判断する。前回お話しした、「システム1を狙い撃ちする設計」への評価がようやくなされるようになった、ということです。

「書いてあるからいいでしょ」から一歩抜け出したのはいいことだな。

ところで、1.の「一般的な消費者」って、どのくらいのレベルの人を想定してるんだろうな。

そこは、中間とりまとめ案の9頁の脚注12に書いてあります。高齢者・未成年者も含め、取引環境や表示の態様によっては意思決定が歪められ得る(状況的な脆弱性を有する)通常の消費者を念頭に置く、ということです。

消費者法のトレンドともいえる「脆弱性」というキーワードがここで出てきました。

ふんふん、「注意して読めば分かるはずだ」ということではない、ということだね。

ただ、1.では「不明瞭」も含まれていたのに、2.が「虚偽である」に限定されているのは、ちょっと狭すぎるのではないかと思います。例えば「この商品を見ている人が他に20名います」が完全なウソならアウトですが、集計方法をあいまいにして実態より多く見せる表示はセーフなのか?サクラではないが特定の高評価だけを並べる口コミはセーフなのか?ということですね。

契約〜注文完了後の場面

そして、契約〜注文完了後の場面でも、事業者には、以下の点が義務づけられています。

(1)最終確認画面の表示義務の拡張
現行法の表示義務・誤認表示禁止の範囲を広げ、支払総額の表示と取引条件の分離表示の禁止などが義務づけられました。

(2)注文確定後のアップセルへの対応
確定後に事業者側から内容変更を持ちかけるときは、変更前後を対照させるなど変更箇所の明示を義務づける。

なんでこんなことが必要なの?

化粧品や健康食品の定期購入をめぐる相談ではこういうのがほんとによくあってうんざりするんですが、回数縛りなしの単品の契約をした相談者に、ポップアップ等で「いまだけチャンス」のような画面を出して定期購入契約を勧誘するケースがあります。
相談員さんからは、アップセル後の画面の記録がないためそれ以上交渉できない、という苦労話をよく聞きます。

(3)電子書面の交付義務
契約内容を記載した電子書面等を、注文完了後遅滞なく、メール等で交付し、後日改変されない形で保存しておく。

しょうもないしくみをあれこれと考えるやつらがいるせいで、ほんとうにめんどうだな・・・

うちの注文完了メール、プラットフォームのテンプレの流用だからな。大丈夫かな・・・

 注文完了メールは、最終確認画面との「同一性」と「記載の明瞭性」を担保しなければならない、ということです。SHOさん、カートシステムとメール配信の連携を作り直さないといけませんね。

解約の場面

解約の場面では、2つほど特筆すべき点があります。

1つは、返品特約の不当な濫用です。これも、相談現場で苦労するところでした。債務不履行解除(不具合、不良品などですね。)など法定返品権によらない解除の申出を受けたのに、社会通念上通常必要とされる確認もせずに、返品特約だけを理由に「権利はない」と告げる行為を、行政処分の対象にする。これはネット固有の問題ではないので、通信販売一般の規律として検討すべきだ、とされています。

もう1つが、これはまたダークパターン関係なのですが、解約手続妨害です。解約手続を不当に遅延させる行為、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為を違法行為とする、ということです。

「ネットで申し込んだのに解約は電話だけ」は禁止になるのかしら?

米国では、一部の州で「クリック・トゥ・キャンセル」といって、オンラインで契約したものはオンラインで解約できるように、ということを直接的に義務づけていますが、日本ではただちにそうなるわけではなさそうです。

解約の簡単さが「申込みと比べて釣り合っているか」が評価の基準となるということで、「オンライン解約を保障する」とは書かれているわけではありませんん。

じゃあ、DAZNの「年間プランなんだから途中で解約しても1年分払ってもらう」は、どうなる?

中間とりまとめ案12頁の脚注19にも記載がありますが、サブスクのような継続的契約について、意図せず契約してしまお、使わなくなっても払い続ける、だから通知義務や中途解約権を設けるべきだ、という指摘は出たようですが、しかしその整理は「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」に委ねられた、ようです。

はー・・・なんで「縦割り行政をやめよう」ってできたはずの消費者庁が、こんな肝心なところで、まさに縦割り行政みたいなことやってんだよ・・・

取消権は・・・

それでさあ、結局、偽のカウントダウンや隠れ定期購入の広告に騙されて買っちゃったら、消費者は「取り消します」って言えるようになるの?

広告場面については「なお、これらに違反した場合の対応については、行政規律による是正を基本とすべきである」ということで、民事的な効果は定められませんでした。

ただし、中間とりまとめ案10頁脚注15は、若干、含みのある書き方をしています。

(もっとも、広告表示のうち、最終確認画面と同程度に消費者の意思決定に影響を与え得るものを明確に切り出せるのであれば、最終確認画面の誤認との均衡を踏まえた取消権等に関する議論が成り立ち得る)

たとえば「購入回数のお約束はありません」と書いておきながら実体は定期購入、という参考11に出てくるタイプなんかは、最終確認画面の誤認と実質的に何が違うのか、と思います。

というか、ここまできて「最終確認画面での誤認」ということにこだわるのは、やっぱりダークパターンの本質をわかっていないと思うのですよ。

例えば、EUのUCPD(不公正商習慣指令)が問題にしているのは「取引上の決定が歪められたか」で、対象は、取引の前・最中・後の全部(3条1項)なんですよね。

われわれがモノやサービスを買う「決定」のプロセスとしては、買う判断だけでなく、店に入る・クリックして進むといった手前の判断も含まれます。UCPDの2019年改正で損害賠償・代金減額・契約解消の個別救済が入り、「歪めた行為」そのものが問題視されることになりました。

もちろん、最終画面ルール(消費者権利指令8条2項、違反すれば契約に拘束されない)もありますが、それだけではないのです。

また、DSA25条は、DPFのインターフェイス設計自体を問題にします。さらに、欧州委員会は2026年の作業計画で、ダークパターン、インフルエンサー広告、依存的デザイン、不公正なパーソナライズを扱うDFA(Digital Fairness Act)の策定を今年第4四半期に予定しています。

かたや、米国では、FTC法5条もやはり、最終確認画面だけではなく、「全体的印象(net impression)」で判断することにしています。ROSCA(Restore Online Shoppers’ Confidence Act:オンラインショッピング信頼回復法)は、重要条件の開示と明示の同意を「課金情報を取得する前」に要求しています。

EUは「取引上の決定が歪められたか」、米国は「全体として何を伝えたか」を重視しているのです。

プラットフォーム規制はほぼ手つかず・・・

まえのブログで言ってたやつ、ほら、EUのDSAみたいに、プラットフォームに「ダークパターンを作るな」と直接義務をかけるのは入ったのか?

ざんねんながら、入っていません。

ただし、DPF絡みでは、消費者庁が誇大広告等について行政処分をした場合に、その広告が表示されている基盤提供者に削除等を要請できるというしくみが提案されています。対象は取引DPFに限らず、広告・SNSのプラットフォームも含む、ということになります。要請に応じた事業者は、販売業者との関係で損害賠償責任を免責される、というたてつけです。

処分してからじゃないと動けないの?

ゆうちょうな話だね・・・

いま広告業界をコントロールしているのはDPFです。ここにメスを入れないと、ダークパターンの問題の多くは解決できないと思うのですよね。ここはざんねん。

事業者のみなさんへ、消費者のみなさんへ

まあ、まだ施行されていないとはいえ、うちは何から手をつければいいんだ?

たしかに施行はまだ先ですが、ECサイトのシステム改修ははやめにやっておいたほうがいいでしょう。

  1. 総額の見せ方の改修:初回価格の強調と総額の分離表示をやめる。一目で総支払額が分かる設計にすべき。
  2. アップセル導線:注文確定の前後で条件が変わる導線があるならば、記録も残す。
  3. 注文完了メール:最終確認画面と同一内容を、改変できない形で遅滞なく消費者に送信する。
  4. 解約フロー:申込みと比べて解約だけが極端に遠回りになっていないか確認する。
  5. チャット・DM:双方向のやり取りで勧誘するなら、電話勧誘販売と同等の規制があると考え、目的・氏名の明示、再勧誘の管理、クーリング・オフ対応を念頭に置く。

なるほどね。

じゃあ、私たち消費者は?

これも繰り返しですが、けっきょくのところ、できるだけ「システム1」で決めずに「システム2」を起動するような心構えをする、ということと、「これは悪質だ」という画面に出会ったら、一般社団法人ダークパターン対策協会(NDDA)に通報してください。

前にも言いましたが、事例が集まることが、行政を動かし、法案をより充実したものにかえていく力になります。

今回の中間取りまとめ案や参考資料に並んだ事例の多くも、もとをたどれば、みなさんの1件1件の積み重ねです。


※本記事は、2026年8月25日時点で公表されている「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ(案)」(資料2-1)および参考資料集(資料2-2)に基づく一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。同案は検討中のものであり、今後の法案化の過程で内容が変わり得ます。

投稿者

住田 浩史のアバター

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