「“ダークパターン” SNSでの勧誘 レスキュー商法 規制強化へ」

NHK NEWS WEB 2026.9.10

https://news.web.nhk/newsweb/na/nd-20260910de49453

前回の宿題

さて、8月の前回の記事で、「レスキュー商法についての改正点は別稿で」と書きましたが、ようやく、その宿題です。

9月10日、消費者庁の「デジタル取引・特定商取引法等検討会」の中間取りまとめが正式に公表されました。8月24日の「案」からは、ほとんど変更は見当たりません。

レスキュー商法って、あの「トイレのつまり390円から」で電話したら10万円請求された、というやつだよね?

ふん・・・390円って、どう考えても、電車賃にもならないだろう。ばかばかしい。

そこが、この商法の本質です。「390円」は値段ではなく、電話をかけさせるためのエサにすぎません。

レスキュー商法のおさらい

このブログでは、2020年12月ごろから、何度も取り上げてきました。

  • 2020年秋ごろから京都府内で相談が急増し、2021年1月、京都弁護士会の有志で「レスキュー商法被害対策京都弁護団」を結成しました。設立から5年半で224件の相談を受けています(2026年6月30日時点)。
  • 2024年1月19日、京都地裁が、この種の集団訴訟として全国で初めて不法行為を認定する判決を出しました(京都地判令和6年1月19日、令和3年(ワ)第2352号。一審確定)。判決は、ウェブサイト運営者と現場に赴く作業者らを「一連一体で組織的に行われていた悪徳商法の一環」として、共同不法行為責任を認めました。
  • その後も神戸地裁姫路支部(令和7年3月19日)、神戸地裁(令和7年9月16日)と、続々と、業者に賠償を命じる判決が出ています(その後、高裁でも維持されています。)。

詳しくは弁護団のウェブサイトを。

はあ・・・こんなに勝訴判決がたくさん出てるのに、被害はなくならないんだね。

まだまだ、なくなりません。

ひとつ、値付けの問題があります。最近の請求額は10万円前後のものも多く、以前のような数十万から100万円超の事案は減っています(少なくとも京都はそうです。北陸などはかなり被害額も大きいようですが・・・)。10万円なら弁護士に頼めば費用倒れになりますし、消費生活センターに相談しても業者が応じなければそれまでです。業者はそこまで計算しています。判決は出るが、訴えられる被害者はごく一部です。だから、被害は減らないのです。

内閣府消費者委員会の意見書も、京都地裁判決の被告の一部は、別の会社名で同じ不当勧誘を行い、今も利益を上げている旨書いています。判決を取っても、逃げてまた違う名前で商売ができるのであれば、むしろこんなに儲かる商売をやめるわけがありません。

ですから、法律のほうを急いで変える必要があるのです。

現行法の到達点:「自分で呼んだからクーリング・オフできない」ということはない

そういや、前に聞いた話だが、自分で電話して呼んだ業者だと、訪問販売のクーリング・オフは使えないんじゃなかったか。

たしかに、特商法26条6項1号に、住居で契約を締結することを「請求した者」に対する訪問販売には、クーリング・オフ(9条)、過量販売解除(9条の2)、取消権(9条の3)、損害賠償額の制限(10条)を適用しない、という適用除外がありますね。これが、業者側のいいぶんです。

ただし、消費者庁は、すでに、ウェブサイトで、レスキュー商法については適用除外とならない、ということを明らかにしています。

外部リンク:消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売等の適用除外に関するQ&A」

今回の中間取りまとめの脚注31にも、こう書かれています。

「自宅等での訪問販売であっても、消費者が事業者に契約を締結することを請求して来訪を要請した場合は、基本的には不意打ち性がないことから、訪問販売の規律の大部分が適用除外となるが、広告の表示額と実際の請求額との間に相当の開きがあった場合は、実際の請求額で契約を締結する意思を有して行った来訪要請とは言えないため、適用除外に当たらない。」

つまり、「390円〜」という広告を見て呼んだ人は、「390円〜」の契約を予期していたけれども、決して10万円の契約などは「請求」してはいない。だから適用除外にはならず、クーリング・オフも取消権も使える、ということですね。

それじゃあ、もう法律を変えなくてもいいんじゃないの?

まず、これは通達やQ&Aのたぐいであって、条文ではありません。また、仮にクーリング・オフができるとしても、この種の業者は、書いてある住所に連絡しても出ませんし、そもそも架空の業者名が書いてることすらあります。そして、そもそも、払ったものを取り返すのはとても大変です。ですので、事後の解除では間に合わない。入口で防がなければならないのです。

レスキュー商法の規律

さて、中間取りまとめの「Ⅳ インターネット取引以外の特定商取引への対策の強化」の1が、レスキュー商法についての規律です。

「このような事例に対応するため、具体的には、ウェブページ等を利用して、著しく事実に相違する商品の価格又は役務の対価を示し、これに誘引されて来訪を要請した者に対し、外部からの介入、勧誘場面からの離脱や、商品等の比較検討が困難な環境において、合理的な根拠なく、当該表示に記載された価格又は対価と著しく乖離した高額の商品の購入又は役務提供契約の締結を勧誘する行為について、違法行為と位置付け、行政処分の対象とすべきである。」

  1. ウェブページ等を利用して
  2. 著しく事実に相違する価格・対価を示し(脚注32:「価格・対価には、「500 円~」など下限の価格・対価のみを示す場合を含む。」)
  3. これに誘引されて来訪を要請した者に対し
  4. 外部からの介入、勧誘場面からの離脱、商品等の比較検討が困難な環境において(自宅が典型。脚注33で、ロードサービスのような路上での勧誘も「規律の対象に含める方向」としつつ、範囲は「引き続き検討」)
  5. 合理的な根拠なく
  6. 表示価格と著しく乖離した高額の契約を勧誘する行為

これを訪問販売の違法行為とし、行政処分(指示、業務停止命令、業務禁止命令)の対象にする、ということです。

ふーん、「500円~」という書き方そのものを問題にするんだね。

そうです。当たり前ですが、500円で1件も成約したことがいないビジネスを「500円〜」と書くことはダメでしょう。内閣府消費者委員会のアンケートでは、「500円~」と書かれていたときに消費者が想定する金額の中央値は「3,000円」でした。「〜」を「500円しかかからないのだな」とは思わないとしても、10万円になるとも思っていない、ということです。

もう1点、広告と勧誘を峻別せず「一連のもの」として捉えた点も、なかなかよいですね。

これは、前回のダークパターンの議論のときにもお話しましたが、インターネット取引におけるユーザー体験(UX)は、表示〜契約まで、連続しています。「入口の表示」と「出口の契約」を切り離して、たんに出口(入口は確かに問題だったかもしれないけど、契約のときは10万円で納得してるじゃないか)だけを見ていたのでは、この種の商法は止められません。

点検商法と共通の規律

Ⅳの2は、点検商法とレスキュー商法に共通する2つの手口への対応です。

第1に、契約前の履行着手です。

「消費者が契約の申込みや承諾の意思表示をする前に、契約の履行に着手し原状回復を困難とする行為を、訪問販売類型において違法行為と位置付け、行政処分の対象とすべきである。」

脚注34は、便器の例を挙げています。「事業者が便器を交換した場合において、施工技術を持つ事業者が(コストをかけて)原状回復することが「物理的に」不可能ではないとしても、「消費者にとって事実上」不可能であれば、「原状の回復を著しく困難」と言い得る」。消費者契約法4条3項の困惑類型と同じ考え方です。

「見積もり無料」と言って蛇口を外して、「工事しないなら蛇口取り外し料金2万円」というやつもいるんだよな。
ほんとにひどいやり方だな。

汚いねー。

ただし、脚注35に「原状回復ができない場面に規制範囲を限定すべきではないとの指摘もあった」とあるとおり、実際には、原状回復が可能な状況であっても、「もう作業を始めたから」と言われて断れない、というのが人の常ではないでしょうか。

「原状回復を困難とする」まできびしくする必要性もないですよね。いわゆるネガティブ・オプション=送り付け商法(59条)と同じで、先に既成事実を作って断りにくくさせるという心理的効果を狙っていることが問題なのです。訪問販売の場面では、6条3項の威迫・困惑に準じて、端的に「禁止行為」とすべきではないかと思います。

第2に、クーリング・オフ妨害です。クーリング・オフ後の履行拒否や不当遅延を「それ自体を違反行為として迅速な執行を行う」こと、そして「クーリング・オフに関する事業者の行為のうち、不実告知、威迫・困惑等に該当し得る悪質な行為については、特定商取引法第6条の禁止行為の該当性を明確化し、必要に応じて規定の見直しを検討することにより、直罰の対象となることを明確化すべきである」とされています。

「返金しないこと」は単なる債務不履行(約束違反)だ、という反対意見もあるようですが、返金をおよそするつもりもないような体制や不誠実な行為、不返金や返金遅延を繰り返すことは、単なる債務不履行ではなく、禁止行為として位置づけるべきです。クーリング・オフは刑罰で保障された重要な権利であり、これが実現されないまま放置されていることは、見過ごせません。

惜しい点

レスキュー商法の規律の基本的方向性は正しいと思いますが、いくつか、惜しい点があります。

まず、民事上の効果が限定的だということです。
Ⅳ1の規律には、取消権もクーリング・オフも直接には付いていません。民事的な救済は、けっきょくはレスキュー商法の適用除外に関する解釈論(「請求」に当たらないから適用除外にならない)に頼ることになります。せっかく「著しく乖離した高額の勧誘」を違法行為として条文化するのであれば、その勧誘で締結された契約は特商法9条の3によって取消すことができる、とすべきではないでしょうか。

さらにいえば、この行為は、行政処分の対象(7条の指示対象行為)にとどめるのではなく、不実告知や威迫・困惑と並ぶ6条の禁止行為、つまり直罰の対象に置くべきです。生活上の緊急事態につけ込んで著しく高額な契約をさせる行為は、不実告知に劣らず悪質です。今年に入ってからも、名古屋地裁(令和8年4月23日)で、この種の商法の悪質性を認めて賠償を命じる裁判例が続いています。この明確な司法の声に、立法も耳を傾けるべきではないでしょうか。

また、これはダークパターンのときにも述べましたが、「著しく事実に相違する」「合理的な根拠なく」「著しく乖離した」という要件が厳格すぎないかと感じます。ここは執行の運用にも影響してきますので、ガイドライン等の下位規範の策定も注視しなければなりません。

また、入口を「ウェブページ等」に限っていますが、いわゆるマグネット広告やポスティングチラシで同じ手口は現に行われています。広告媒体で区別する理由はありません。

第2に、行政処分の効果です。
悪い業者は、バーチャルオフィスの住所と発信専用の電話番号で営業し、処分を受ければ社名を変えます。内閣府消費者委員会の意見書も「執行体制」の強化と「罰則強化の必要性」の検討を求めました。中間取りまとめのⅤは、関係機関連携、AI活用、複数事業者への一体的執行を挙げていますが、法定刑の引上げや違法収益の没収は、Ⅵ1で「指摘があった」と記録されるにとどまっています。

京都地裁の事件がそうだったように、レスキュー商法は、ウェブサイト運営者、電話受付、現場の作業者が分業し、処分の名宛人になる作業者は、いわゆる振り込め詐欺における「受け子」・「出し子」に過ぎません。中間取りまとめのⅤ2(3)は「販売業者と実質的に一体となって取引に関与する者」に厳正対応するとしています。

もともと、特商法2条の「販売業者」の定義として、消費者庁は、特商法「解説」において、次のように述べています。

「例えば、リース提携販売のように、「契約を締結し商品や役務を提供する者」と「訪問して契約の締結について勧誘する者」など、一定の仕組みの上での複数の者による勧誘・販売等であるが、総合してみれば一つの訪問販売を形成していると認められるような場合には、これらの複数の者は、いずれも販売業者等に該当する」

提携リースにおけるリース会社とサプライヤーが「一つの訪問販売を形成している」のであれば、レスキュー商法におけるウェブサイト運営者と作業者の「一体」性はよりいっそう明らかでしょう。処分は、やろうと思えば、いまでもどんどんできるわけです。奮起に期待したいですね。

第3に、DPF(デジタルプラットフォーム)に手が届いていないことです。
これが最大の問題です。内閣府消費者委員会のアンケートでは、トラブル業者を知ったきっかけの最多は「スマートフォンでの検索」(34%)で、選んだ決め手は「広告で安い金額を提示していたから」(39%)、「検索結果の一番上に表示されていたから」(33%)でした。レスキュー商法の相談のうち電子広告がきっかけのものは、2014年度の約15%から2024年度には約55%になっています。

すでに以前の記事でも書いてますが、リスティング広告(検索連動型広告)は、新聞広告とは違います。検索サービスと連動して広告主を最上位に表示し、「検索でトップに来る業者なら信頼できる」という外観を作ります。レスキュー商法はこの外観なしには成り立ちません。

内閣府消費者委員会の意見書は、この点について、新聞広告の媒体責任に関する最高裁判決(最判平成元年9月19日)の枠組みを引きつつ、DPFに調査確認義務を負わせる余地があるとし、政府がDPFに取組の高度化を要請するよう求めました。日弁連も、今年3月、大規模プラットフォームに掲載前の調査義務、申出を契機とする停止措置義務、広告主の特定情報の提供要求、実施状況の公表を法定し、課徴金納付命令まで設けるよう求める意見書を出しています。

これに対して中間取りまとめのⅢ6は、消費者庁が行政処分を行った後に、その広告を表示しているプラットフォームに削除等を「要請」できる制度と、要請に応じたプラットフォームの免責を法定する、というものです。法的義務は課さない。日弁連の主張は脚注28に「指摘があった」と記録され、「広告の審査義務を事業者に課すとした場合、国民が受け取る情報の適否に関する判断を一事業者に委ねることになり、慎重な考慮が必要」という反対意見が併記されています。

ダークパターンのときにも言った気がするけど、処分してからじゃないと、プラットフォームには何も言えないのか・・・

なんでこんな消費者庁はDPFに気を使ってるの?

たとえば、レスキュー商法被害対策京都弁護団は、Googleに対し、広告ポリシー違反を理由に掲載停止を求める申入れを何度もしましたが、回答も掲載停止もありませんでした。

被害者が損害賠償請求をしようにも、広告主の実名や所在を確認する手段がない。DPFに広告主の本人確認を義務づけ、被害者に開示請求権を認めることは、最低限必要です。

また、この要請制度の要件は「通信販売に係るインターネット上の誇大広告等に関し特定商取引法に基づく行政処分を行った場合」と書かれています。レスキュー商法は訪問販売ですから、これだと、レスキュー商法の広告はそもそも要請制度の対象にならない可能性があります。インターネット広告の規律を訪問販売や店舗販売に及ぼすことは「慎重に検討」とされましたが、レスキュー商法は、インターネット広告で呼び込んで訪問販売をする商法そのものです。

消費者のみなさんへ

「現行法の到達点」のところで書いたように、レスキュー商法については、現時点でもあきらめる必要はありません。とりあえず・・・

  1. 検索結果の一番上は、広告です。信頼の証ではありません。
  2. 水回りは、自治体の上下水道局が指定業者を案内しています。車は自動車保険のロードサービスやJAFを先に確認してください。
  3. とにかく払わないのが一番ですが、その場で払ってしまっても、あきらめないでください。クーリング・オフや取消しが使える場合があります。契約書面をもらっていなかったり、書面に不備があれば、クーリング・オフの8日間は始まっていませんので、ずっとクーリング・オフできます。
  4. まずは、お近くの消費生活センター(消費者ホットライン「188」)に相談してください。

*本記事は、2026年9月10日に公表された「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」に基づく一般的な解説であり、個別事案についての法的助言ではありません。中間取りまとめは今後の法案化の過程で内容が変わり得ます。


投稿者

住田 浩史のアバター

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