オーディション商法

オーディション「合格」 署名したらレッスン料78万円

https://www.asahi.com/articles/ASN4S662XN4PUTFL00S.html 朝日新聞デジタル 2020.4.26.
朝日新聞(紙面) 2020.5.12.(*)

これは、私が、最近担当した事件について取材を受けた「オーディション商法」についての記事です。

YouTubeなどの動画配信アプリや音楽配信システムの普及により、「誰でも芸能人になれる」時代になりました。

今後、東京だけでなく、全国に広まるおそれがある可能性があり、注意が必要ですので、紹介します。(*追記:5/12朝日新聞紙面にも掲載されました。)

オーディションって、歌を歌ったり、ドラマに出たりするためにテストを受けるやつだよね?でも、あれって、もともと無料のはずじゃ・・・?なんで「被害」にあうの?

そのとおりですね。でも「無料」だからこそ、被害にあうのです。「オーディション商法」といっても、オーディション以外のところでお金をとる商法なのです。

ひとことでいうと、「オーディションをうたって呼び出した消費者に、オーディション後、突然、高額なレッスン受講契約等を勧誘する手口のこと」です。

あ、これは、東京都が言ってるのの受け売りです。
外部リンク:東京都

東京都や、国民生活センターの統計によれば、2017年くらいから件数が増えています。その前は、「スカウト商法」と言って、渋谷などの路上でスカウトをして同様にレッスン契約を勧誘する手口が流行していましたが、これは、その発展形のようですね。

外部リンク:国民生活センター

ふうん。でも、オーディションはオーディションで受けて、そのあとレッスン契約は断ればいいんじゃないの?そんな商法に、なぜだまされるのかな・・・?たんに不注意なだけでは?

いやいや、そこが、彼らのうまいところなんだよ。

彼らは、消費者の心理を、巧みに利用しています。以下に例を挙げておきます。

・レッスン契約の勧誘をする予定であることについては、オーディション告知の段階では隠しておく。

・「選ばれました」「才能がある」「今、上層部で協議しているが、合格にするように、私が口利きをする」などとおだてて、まずは、その気にさせる。

・デビューに備えてということを口実に、住所等の個人情報のほか、銀行口座や収入、現在の職場の情報を聴き取る(後で勧誘を断りづらくさせ、また、どのくらいまで支払可能か見定めるため。)。

・オーディションの合格を告げてから、その場で、不意打ち的に、レッスン契約をはじめて勧誘する。

・その際に「せっかく合格しても、レッスンをしないとつかいものにならない、表舞台に立てない。」と不安にさせる。

・また、「レッスンをすれば、デビューできる。」と約束する。

・「せっかく合格にしてくれたのに・・・」と恩義を感じさせる。

うーん。確かに、こういうのを積み重ねられると、いつの間にか、どんどん断るハードルが高くなってる気がする。

自分だったら、どこで引き返せるかな・・・と、少し考えてみよう。

これはビジネスとして参考になるな・・・でもやっぱりお客さんの信頼を失うから、長い目で見たらこんなやり方ではダメかな。

「不安を煽る告知」

さて、記事にもあるとおり、本件では、訴訟提起を念頭に交渉をして、返金を受けることができました。

訴訟では、特定商取引法(販売目的隠匿型アポイントメントセールスによる訪問販売、または業務提供誘引販売)上のクーリング・オフで解決することが考えられます。また、消費者契約法の平成30年改正で新設された消費者契約法4条3項3号イの「不安を煽る告知」を主張することも考えられそうです。

なんだか難しい・・・

裁判になったら、消費者契約法という法律で最近改正された点が争点になるケースかも、ということです。
不安につけ込む「つけ込み型」の不当勧誘が問題になっています。

消費者契約法ってまた改正されたんだ。これは気をつけないとね。

被害を防ぐには

このような被害を防ぐにはどうしたらいいでしょうか。

「もしレッスン契約の勧誘をされても、その場では決めないで」ということがもちろん、肝心なのですが、その時には、すでに、「合格」ということに高揚し、あるいは、不安な気持ちにさせられ、断りづらい状況に追い込まれていることがほとんどだと思います。

この段階で断ることは、なかなか難しいでしょう。

芸能界に入りたい、というのは多くの人の夢でもありますが、それにつけ込む人もまた多いのも現実です。

オーディションを受ける際には、事前にどのような業者か、可能な限り情報を収集し、また、レッスン契約のように、いきなりその場で「お金」の話になることもあり得るものと身構えておきましょう。

被害にあったら、ひとりで悩まずに、188(いやや)消費者ホットラインに電話し、消費生活センターに相談してくださいね。

外部リンク:188 消費者ホットライン(国民生活センター)


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院非常勤講師(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

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