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はじめに
さて、Covid-19(新型コロナウィルス)の問題は、投資の世界でも、新たな事態をもたらしています。
そうそう、日経平均が一時期16000円台をつけたかと思ったら、最近は、また20000円台になってるんだな。
投資のフリをした詐欺も、流行し始めているらしいね。
「新型コロナのワクチンを開発している」として社債を募集するようなダイレクトメールもきているみたいだよ。
そんなのも出てきてるのか・・・。実家の親が心配になったから連絡してみようか。こないだも「新型コロナのワクチンのためなら、私はひと財産を寄付しようと思ってる。」とか言ってたからなあ。
詐欺を考える人は、本当にうまいですね。
ひところはやった、いわゆる劇場型の社債詐欺もちらほらと出ているようです。
外部リンク:国民生活センター 新型コロナウイルス感染症関連
なお、Covid-19に関する「きょうの消費者ニュース」の記事一覧は、こちらからどうぞ。
内部リンク:カテゴリー別記事一覧(COVID-19、新型コロナウィルス)
さて、今回は、投資のフリをした詐欺の話ではなく、投資の話を。
ちょっと前ですが、「原油先物の価格がマイナスをつけた」というニュースについてお話しします。
「マイナスになる?」
まず、このニュースを聞いて、どう思われましたか?
あ、そのニュース、いまだに意味がよくわからなくて。
株だと、価格がマイナスになることはないよね。どういうことなんだろう。
うーん。先物をやったことはないから、わからないな。普通に考えて、原油をもらえて、さらにお金ももらえる、ということだろ?変だぞ。
そうですね。直感的によく理解できないところがありますね。
これを理解するためには、先物取引、というものの仕組みがわかっている必要があります。
いいですか。いきますよ。
先物取引とは、①将来の定められた期日(清算日)に、②原資産を、③定められた数量・定められた価格で、④売る / 買う取引のことをいいます。
はい、さっぱりわかりません・・・
ですよね。
原油でなく「油揚げ」で考えてみる
では、まずは、ふだんやっている現物取引を比較してみましょう。
え、わたし、何も取引なんかしていませんよ。
毎日、していますよ。
例えば、原油でなくKONさんが大好きな油揚げで考えてみましょうか。
油揚げの現物取引(買い)とは、①今日2020年5月13日に、②油揚げを、③1枚・100円で、④SHOさんから買う取引です。
これならわかります。
SHOさんにとっては現物取引の「売り」になるわけですね。
油揚げ先渡取引
さて、「油揚げ」の先物取引について、考えてみましょう。
おい、本当にそんなのがあるのか?
もちろん、現実にはありませんが、やってみましょう。
今はSHOさんは油揚げを100円で売っています。まず、KONさんは、油揚げの価格が、3か月後に値上がりしそうだと考えました。
一方で、SHOさんは、逆に、3か月後に値下がりしそうだと考えました。
そこで、ふたりは、こういう取引を考えました。
①今から3か月後の2020年8月13日(清算日)に、②油揚げを、③1枚・100円で、④KONさんがSHOさんから買うことを約束しておく。
そして、実際に、2020年の8月13日がきました。油揚げの価格は110円になっていました。さて、どっちが得をしていますか?
えっと、110円で買わないといけないものを100円で買えるわけだから、私は、10円得したことになるね。
ふむ。ぼくは本当は110円で売れたのに、こんな約束をしたせいで10円もうけそこなったということか。
なるほど、これが先物取引なのか?
いいえ、違います。
これは、先渡取引 Forwardsといい、先物取引 Futures とは、別物です。先渡取引は、デリバティブではなく、現物取引の一種とされています。
え 違うんですか・・・これならなんとなくわかるのに。
安心してください。あと、もう一歩で、先物取引ですから。
ちなみに、油揚げ先渡取引は、KONさんとSHOさんの1対1の相対取引OTC(Over The Counter、店頭取引ともいう。)なので、少し不便なんです。
そうだな・・・例えば、途中で見込みがはずれるなあと思っても、途中でやめることができない。絶対、8月13日に、売買しなければならないもんな。
それに、例えば、逆に、こっちの見込みどおり、油揚げが80円になったときに、KONさんが本当に約束どおり100円で買いに来てくれるかどうかもわからん。
結構、リスクがあるよ。このままでは普及しなそうだな。
油揚げ先物取引の誕生
さて、では、いよいよ「油揚げ」先物取引の誕生です。
「油揚げ」先渡取引には、SHOさんのいうとおり、融通のきかないところがありました。
そこで、1対1でやるのではなく、取引条件をそろえて、多くのひとに取引をしてもらうよう、取引所をつくって、そこで取引をすることにしましょう。
①今から3か月後の2020年8月13日(清算日)に、②油揚げを、③10,000枚を1単位として、合致した値段で、④売り / 買いする。ただし、⑤取引を出す時に、取引所には預託金として1単位あたり100,000円を預ける必要があり、⑥清算日までに反対売買をして取引を終了させることができる。
枚数が、とても増えたね。10,000枚はとても食べきれないや・・・
まあ、1枚じゃ細かすぎて取引しにくいからな。
そのかわり、100,000円を預ければ、100万円分(油揚げ1枚100円として)の取引ができるんだから、効率がいい。
しかも、途中でやめられるんだな。例えば1単位を単価100円で買って95円になったとき、その後もっと下がりそうだと思えば、95円で売ってしまえば、損失は50000円で済む。もし、先渡取引だと、相手は「このまま持っておけばもっと下がるぞ」と思って、絶対、買ってくれないもんな。
あのー、価格はどうやって決まるんでしょうか?
取引所が適当に決めてくれるんですか?先渡取引の時は、自分たちで勝手に決めましたよね。
例えば、東京商品取引所という市場では「ザラバ取引」という方式が採用されています。当事者の意向で価格が決まっていくんですよ。
*ザラバ取引:多数の売り注文と買い注文とで値段を競い合い、値段と数量が合致したものからどんどん個別に成立させていく方法のこと。
「現受け」の恐怖
さて、先物取引の仕組みは、だいたいわかってきましたか?
わかったと思うよ。
ひとついいですか?これ、反対売買を出さずに、3か月後まで買ったままだったらどうなるの?
そうですね、いい質問です。いよいよ、核心に近づいてきました。
まあ、約束だから、油揚げを10,000枚、その時の値段で買ってもらわないとな。
そんなの要りません!
ですよね。
でも、買ってもらわないといけないんです。これを「現受け」といいます。
これとは逆に、もし、「売ったまま」清算日を迎えると「現渡し」義務が発生します。現に、10000枚を渡さなければいけません。
さて、実は、原油先物の場合も、この「現受け」が問題となっているのです。
つづきは次回「その2」で。
内部リンク:原油先物価格がマイナスになるとはどういうことか・その2
すいません、長くなってしまいました・・・