原野商法二次被害:「1粒で2度、3度おいしい」悪質業者に注意

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「原野商法」2次被害が急増 値上がり見込めぬ土地購入者に「売って」と「諸経費」だまし取る

https://mainichi.jp/articles/20200606/k00/00m/040/055000c
毎日新聞 2020.6.6

はじめに:高齢者の消費者被害

さて、国民生活センターは、このように述べています。

高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの大きな不安を持っているといわれています。悪質業者は言葉巧みにこれらの不安をあおり、親切にして信用させ、年金や貯蓄などの大切な財産を狙っています。高齢者は自宅にいることが多いため、電話勧誘販売や家庭訪販による被害にあいやすいのも特徴です。

外部リンク:国民生活センター「高齢者の消費者被害」

そのとおりだよな。おれの親も、家に一人で暮らしているから、心配だよ。
もう、わるい業者にだまされる条件が揃いすぎてるんだよな・・・

前回の記事の「災害便乗商法」も、結局は、お年寄りが被害にあってるんだったよね。

そうです。

災害に乗じて保険金が使えるとして不当な契約を結ばせる商法については、2018年の相談のうち、実に80パーセントが60歳以上というデータがありますね。こちらからグラフなどが見られます。

外部リンク:国民生活センター「保険金を使って住宅を修理しませんか」がきっかけでトラブルに!-高齢者からの相談が増加しています-」

「きょうの消費者ニュース」の記事は、こちらから。
内部リンク:災害便乗商法:「火災保険の手続きをサポートします」という工事業者にご注意を

そして、今、高齢者を中心に被害が増えているのは、原野商法の二次被害です。これもまた、高齢者の心理に巧みにつけ込んだ、悪質な商法といえます。

きょうは、原野商法二次被害について、考えてみましょう。

原野商法とは

しかし、原野商法って、随分むかしに、流行ったやつじゃないか?
いわゆるバブルの頃とか、もっと前の時代かもしれない。

そうですね。政府広報では、原野商法について、このように説明されています。

「原野商法」は、値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について、実際には建設計画等はないにもかかわらず「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などとうその説明をしたり、「将来確実に値上がりする」などと問題勧誘を行ったりして販売をする商法です。1970年代から1980年代にかけて被害が多発しました。

外部リンク:政府広報オンライン「原野商法」再燃!
「土地を買い取ります」などの勧誘に要注意」

ふうん、そうすると、原野商法そのものは、今はないのかな?

いやいや、そんなことはないですよ。

原野商法も、時代にあわせて変化しています。

例えば、10年前くらいから、お孫さんやご家族と一緒にリゾートが楽しめますよ、また、資産にもなりますよ、などして、海外の高級リゾートホテルの「タイムシェア」をうたって会員権を売りつける商法が出てきています。

外部リンク:国民生活センター「海外リゾート会員権「タイムシェア」契約は慎重に」

ああ、そういえば、空港とかで、綺麗なブースをみたことあるな・・・ハワイとか?
あれ、どう考えても高いんだよなあ。ハイシーズンはみんな予約が重なるし、行かなくても管理費とかお金がかかるみたいだし。いま、ホテルなんか安く泊まれる方法いっぱいあるし。あれも、一種の原野商法なのか?

不動産や、不動産を利用する権利の価格がいくらが適正なのかって、なかなかわからないよね。

話だけ聞くと「わあ、いいなあ」と思うけど、よく考えたら、少なくとも、空港や旅先なんかで売りつけられて、テンションが上がった状態で、ひょいっと買うものではないよね・・・

そうですね。海外リゾートのタイムシェアの契約の解約は、なかなか苦労します・・・。

なお、今だと、Covid-19の関係で、都会は危ないから田舎に移り住もう、いまこそ別荘を持ちましょう、などといって、無価値な土地を売りつけてくる業者なんかも出てくるかもしれませんね。

というわけで、原野商法は、決してなくなったわけではありません。

まだまだありますし、これからもなくならないでしょう。

なお、原野商法の最近の実例としては、原野商法に関与した宅建士の賠償責任が認められたものが注目されます。
・東京地判平成30年12月19日ウエストロー文献番号2018WLJPCA12198006
・東京地判平成31年3月20日ウエストロー文献番号2019WLJPCA03208027
・東京高判令和元年7月2日先物取引裁判例集81号99頁

また、逆に、「所有する不動産を不当に安く買い叩かれた」というものもあります(東京地判平成30年5月25日判例タイムズ1469号240頁)。

さて、ここからがきょうの本題。

すでに、かつて原野をつかまされてしまった人にも、また、悪質業者が近寄ってきているのです。

これが二次被害の問題です。

原野商法の二次被害①:管理費請求

さて、では、彼らは、原野商法の被害者に接近して、どうやってお金をとるのでしょうか。

原野商法の二次被害と一口にいっても、たくさんのバリエーションがあります。

まずは、管理費の継続的な請求です。

このようなケースがあります。
・作業をしていないにもかかわらず、管理費を請求する。
・管理契約をしていないにもかかわらず、一方的に作業した、として、管理費を請求する。
・契約書に、土地の所有者である限り、事実上契約を更新しなければならず、解約が認められない、という条項があり、管理費請求の拘束から逃れられない。

そりゃ、困るね。
土地を買っただけでは被害は終わらないんだね。

さて、2020年6月3日、適格消費者団体特定非営利活動法人ひょうご消費者ネットが、「土地を所有していることによって、契約を更新したものとみなす」との条項のある契約書に基づき管理費を請求している業者に対して、その条項の使用の差止めを請求する訴訟を提起しました。

外部リンク:ひょうご消費者ネット「申入・差止請求一覧

ちょっと話は違うけど、「適格消費者団体」とか「差止請求」ってのは、なんなんだ?
普通の裁判とは、どうちがうんだ?

「差止請求」とは、消費者契約法12条以下に定められた手続きで、内閣総理大臣の認定を受けた「適格消費者団体」が原告となって、事業者に対して、消費者契約法やその他いくつかの法律に反する不当な条項の使用や、取消の対象となる不当な行為を行っていた場合に、それを差止めるとの命令を求める裁判のことです。

詳細は、次のリンクをみてくださいね。

外部リンク:国民生活センター「消費者団体訴訟制度(団体訴権)」

へえ。「適格消費者団体」は、全国に20団体以上もあるんだね!

私たち一人一人が原告となる普通の裁判だと、「条項が不当だから、管理費を返せ」とかそういう裁判になるんだけど、消費者団体がやる場合は、「不当な条項は使うな」「不当な行為はするな」と裁判所に訴え出ることになるんだね。

その通りです。ひとことでいうと、消費者被害を、一挙に、未然に防止するための制度なのですね。

訴状をみますと、管理費請求については、土地を所有する限り更新義務を負わされるという条項について、消費者契約法10条に反するという構成をとっています。

消費者契約法第10条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

このひょうごネットの差止訴訟の行方は、大変、注目されますね。

二次被害②:測量費などの請求

さて、②と③は、いずれも、「こんな土地を抱えて大変ですね。私が、なんとか土地を売ってあげましょう。」と言って近づくパターンです。

そうか、さっきの管理費の請求があったりして、原野を持っている人は、はやく土地を処分したい不安でいっぱいなんだね。

なるほど、そこが、高齢者の「不安」につけこむ、というやり方なんだな。

「自分のせいで、次世代に、負の遺産を残したくない」という気持ちは、お年寄りだったら、絶対にあるよな。

本当に、卑劣なやり方だなあ。

その通りです。

いったん「あなたの不安に寄り添いますよ」として、親切なふりをして、近づいてしまえば、あとは簡単。

まずは、その準備として、整地や測量、登記のために費用が必要になりますよ、といってお金を騙しとる手法があります。

こういったケースについての最近の裁判例としては、東京地判平成30年10月4日先物取引裁判例集80号245頁などがあります。

二次被害③:交換型・バーター型

次にあるのが、「うちの持っている別の土地と交換してください」「下取るので、差額で代わりにうちの会員権を買ってください」という、交換型・バーター型です。

業者も、もちろん、被害者が持っている原野などに価値がないことは知っていますから、いりません。ですので、単に買い取るだけでは単なる損です。なんの商売にもなりません。

ですから、別の土地との交換や、別の商品との抱き合わせを提案して、お金を出させるのです。

なるほど・・・でも、被害を受けている人に、また、お金を出させるんだよね。
そんなに、うまくいくのかな。

そこが、うまいところです。被害者は、とにかく、なんとしてでも、土地を手放したいのです、業者は、そこに手を差し伸べているわけですね。ですので、それを利用すれば、お金をさらに出させるのは、簡単なのです。

これは、行動経済学・社会心理学的には、「プロスペクト理論」と「ローボール・テクニック」で説明がつきます。

「プロスペクト理論」とは、ごく簡単にいうと、人間の心は、経済的合理性にしたがって行動するようにはできておらず、「損」に反応しやすい性質があることをいいます。人は、とにかく「損」を避けたいのです。

なるほどな、土地を持っていることは、管理費を支払い続けなければいけないから、「損」の確定だもんな。それは、絶対に避けたいんだ。

そうです。そのためなら、いちかばちか(だいぶ掛け率が悪くても)、業者のいうことを、信じてしまうのですね。

また、「ローボール・テクニック」とは、先に承諾させやすい点を承諾させ、そこから条件を付加していくテクニックのことです。まず、「土地を買い取りましょう」ということで、その点については、被害者の承諾をがっちりと得ているのですね。

そっか、その後で、「実は、条件がありまして・・・」と言っていくわけだ。うまく考えてられているねえ。

このうち、交換型の裁判例としては、さいたま地判平成30年12月4日ウエストロー文献番号2018WLJPCA12046001があります。

また、バーター型の裁判例は、京都地判令和2年2月20日消費者法ニュース124号262頁・318頁、判例時報2468・2469合併号135頁があります。

なお、この京都地裁の裁判例は、私(「きょうの消費者ニュース」の著者=住田浩史)が、原告代理人になったものです。

高齢者の消費者被害をなくすためには

しかし、どうやったら、お年寄りが、こんな二度も三度も被害にあうような事態を避けられるんだろうか。全く頭が痛くなるよ。

これも、やっぱり訪問販売なんだろ?
やっぱり訪問販売をなくす必要があるんじゃないのか?

そうですね、これらの裁判例を見ても、多くは訪問販売からスタートしているようです。また、私の依頼者のところには、うんざりするほどたくさんの買取業者からのDMが来ています。

前回、災害便乗商法のところでも書きましたが、やはり、不招請勧誘の禁止が最も効果的なのではないでしょうか。


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院客員教授(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

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