水回り、鍵開けレスキュー商法に注意!:「5000円のはずが20万円請求された」「自分が呼んだらクーリング・オフできない?」

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「水回り修理」相談 全国最多

https://www.yomiuri.co.jp/local/hyogo/feature/CO047951/20201223-OYTAT50043/
読売新聞 2020.12.24

はじめに:レスキュー商法とは

さて、突然ですが、みなさんの家のポストには、ビビッドな色づかいで「水道トラブルやトイレのトラブルのときには駆けつけます!ここにお電話を!0120-〇〇〇-〇〇〇」というマグネットが投函されていたりしませんか?

あー、よくあるよね。わたしも冷蔵庫に貼ってるよ。まだ、連絡したことはないけど、もし、なんかあったら電話しようかな、と。それがどうしたの?

うーん、どうだろう、そういうのは・・・。よくわからない業者かもしれないからなあ。

最近は、やっぱりインターネットで調べることが多いから、何かあったらまずスマホでさがすといいんじゃないかな。さすがにおかしなところはトップに出てこないだろ・・・

はい、きょうは、ぜひ、そんなみなさんに読んでいただきたい記事です。

まずは、このトップに引用した新聞記事を読んでください。

へえ、水回りトラブルに駆けつける業者のなかには、不必要な作業をしたり、とても高額な費用を請求したりする、悪い業者もいるんだね。

これが、レスキュー商法かあ。気をつけないとね。

それにしても、なぜか、兵庫に多いのか・・・

ふむふむ、「トラブルになっている業者は特定の水道会社とその系列会社とみられ、県内を拠点にしている。これらの会社は少なくとも10件以上で訴訟に発展していることが確認されている。」だって。

それじゃあ、兵庫以外の人は大丈夫なのか?

兵庫だけでなく全国でレスキュー商法が増加している

兵庫だけでなく、この種のレスキュー商法は、近年、全国で増加しています。

外部リンク:国民生活センター「水漏れ修理、解錠など『暮らしのレスキューサービス』でのトラブルにご注意」

なるほどね。毎年、相談件数が増え続けているんだね。

そうです。

とくに、水回り、鍵開け、害虫・ネズミ駆除など、消費者がとくに「困ったなあ」「急いで解決しないと」というときに駆けつけてくれる、頼もしいひとたちなわけですが、逆に、この「困った状況」につけ込んで、不当な高額請求をしたりすることもあります。

これは、「つけ込み型」商法の一種ともいえますね。

レスキュー商法のからくり

まあ、あんまり高すぎるのは問題かもしれないけど、でもさあ、夜でも休日でも現場に駆けつけてくれるわけだし、多少はお金が高くてもしかたないという気はするな。

それに、業者の方も、現場で一応見積もりを出したり、作業内容を説明したりはしてくれるんだろ?消費者としても、そのときに「わかりました、それでもいいからお願いします」って言ってるんじゃないのか?もし高かったり、他と比べたかったら、いったんそこで「うーん、いったん考えます」といえばいいわけだし。

消費者には「選ぶ」自由は、確保されているんじゃないか?

そうかな?

トイレにしても、鍵開けにしても、とにかくすぐに解決したくて、どうしたらいいかわからない状況でしょ?

業者から「こうしますが、いいですか?」「これくらいかかりますがいいですか?」「今やめるといままでの作業料を請求しますがいいですか」と言われて、「選べる」自信は、私にはないなあ。

BENさん、おっしゃるとおり、この種の業者は、作業説明をしていないケースもあれば、しているケースもあります。

ただし、KONさんのいうとおり、トイレの詰まりをなおすために、まず「30000円かかります」と言われ、次に「ダメでした、次の作業はもう少し難しくて50000円かかります。もし、いまここでやめても30000円はかかりますよ」と言われると、どうですか?「そんなら、やめとくわ」といって30000円払えますか?

たしかに・・・それだと30000円がまったくの無駄になっちゃうもんな。

さて、この消費者心理は、行動経済学の「プロスペクト理論」として説明がつきます。

要するに、業者の説明を聞いて、このままだと「30000円の損失」が確定してしまうわけですが、その確定を避けるために、ひとは、(そこで損失がとどまるかどうかの保証がないにもかかわらず)「50000円」のさらなる追加支出を選ぶわけです。

この「マイナス局面でのリスク負担志向」は、投資被害にハマるひとのパターンです。

そっか、こんなふうにして、トイレの詰まり解消に、何十万円も払っちゃうんだ・・・

よく考えれば、そのお金で、超高級トイレが買えちゃうね。

そのとおりです。でも、トイレの詰まりが生じたときの人間の心理なんて、こんなもんです。みなさんも身に覚えがあるのではないですか?

もちろん、そのことを責められませんし、責めるべきは、その心理につけ込んで悪質な行為をする業者です。

レスキュー商法の解決:クーリング・オフできない?

問題点はわかったよ。じゃあ、どう解決するんだ?
お金を払うって約束したんだったら、基本的には難しいんじゃないのか?

解決は、いくつかありますよ。

たとえば、一番かんたんなのがクーリング・オフですね。

訪問販売なので、書面交付があればその日から8日間はクーリング・オフをして、お金を返してもらえます。

いやいや、それは難しいんじゃないのか?

いちおう、以前もクーリング・オフの記事があったから、商売の関係ですこし特定商取引法を勉強したけど、消費者が呼んだ場合は、クーリング・オフできない、って聞いたことあるぞ。

内部リンク:路上で買ったマスクは3000円未満でも返金を求められるか(路上販売とクーリング・オフ)

SHOさん、よく勉強されていますね・・・特定商取引法26条6項1号(請求訪販)の問題ですね。

特定商取引法9条(訪問販売のクーリング・オフ規定)

特定商取引法26条6項(適用除外) 
第4条から第10条までの規定は、次の訪問販売については、適用しない。
1 その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売

そっか、業者が押しかけてきたわけではなく、消費者の方から、業者に「家に来て、修理して」といっているから、「契約を締結することを請求した」ことになっちゃうのかあ。

いいえ。この条文は、この種の悪質なレスキュー商法には適用がなく、クーリング・オフができます。

この適用除外の条文の趣旨は、あらかじめ明確に契約を締結する意思がある人が、業者を呼んで、その内容の契約締結をする場合は、「不意打ち」とはいえないから、クーリング・オフという制度は必要ないだろう、というものです。

しかし、このような水回りトラブルについては、そもそも、呼ぶ前には、価格も作業内容も全く決まっていません。価格も作業内容も決まっていないのに「とにかく契約をする意思だけある」という人はいません。よって、そもそも、あらかじめ明確に契約を締結する意思があった、とはいえません。

ましてや、この種のレスキュー商法では、だいたい、ウェブサイトやマグネットには「5000円〜」との安価な価格が表示されています。

そうそう!うちの冷蔵庫に貼ってるやつもそれだ!安いなあ、と思ってたよ。

やっぱり、そんなうまい話、ないよねえ・・

もう、あのマグネット、捨てとこ。

でも、実際には数万〜数十万円の高額な請求をするわけですね。呼んだ方は、まさか、こんな高額だとは、思ってもみません。

これはまさに「不意打ち」であり、なおさら、あらかじめ契約する明確な意思があった場合には当たらないでしょう。

なお、2020年に開催された消費者庁の「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」でも、このレスキュー商法が議論され、その報告書(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/assets/consumer_transaction_cms202_200819_03.pdf、11頁)では次のようにとりまとめられており、参考になります。

「暮らしのレスキューサービス」に関する特定商取引法(訪問販売)の規定の適用について、1見積もりのために訪問を要請した事業者とその場で修理等の契約をした場合及び2 広告等で安価な価格のみを示しておきながら、実際には正当な理由がないのに高額な料金を請求する場合は、特定商取引法第 26 条第6項第1号に基づく来訪の請求に係る適用除外には該当せず、クー リング・オフ等の訪問販売の規定が適用される旨を特定商取引法に関する通達(「特定商取引に関する法律等の執行について」)に明記することが考えられる。

外部リンク:特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会

レスキュー商法の被害をなくすためには:実はDPの問題

そういえば、原野商法二次被害を勉強したときには、結局、「不招請勧誘」を禁止し無いとダメだね、という話になったよね。レスキュー商法はどうしたらなくせるのかな?

内部リンク:原野商法二次被害:「1粒で2度、3度おいしい」悪質業者に注意

これも、やっぱり訪問販売だけど、まあ、消費者が呼んでるわけだからな。
結局は、信頼できる業者をどう探せるかだと思うんだよな。

そうですね。いまは、残念ながら、この種の被害のきっかけは、多くがインターネットの検索です。たとえば「〇〇トラブル駆けつけ隊」「〇〇トラブル110番」のような、一見して立派なウェブサイトをもっている「プラットフォーム」経由で、実際には悪質な業者が駆けつける、という悪夢のような状況になっているのです。

このようなDPには「自主規制」などの発想は、毛頭、ありません。引用した記事にあるように「兵庫県の特定の業者」がやっているという状況が仮にあるとしても、それは今だけであり、おそらくは、あっというまに、全国に同様のスキームが拡大し、さらに被害が拡大することが予想されます。

そっか、ここでも、デジタルプラットフォーム(DP)の問題が出てくるんだね。

そうなのです。ことDPに関しては、自主規制、自由市場に任せておけばものごとは必ず良くなる、というわけではないのです。


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院客員教授(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

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