デジタルプラットフォーム、消費者保護のために新法制定へ(2021年1月7日,2021年1月22日,2021年5月7日加筆,)

cloud

ネット販売のトラブル対策求め、新法提案へ 消費者庁

https://digital.asahi.com/articles/ASND43T1XND3UTFL00P.html
朝日新聞デジタル.2020.12.26

デジタルプラットフォーム(DP)についてのいままでの記事のおさらい

さて、報道によれば、消費者庁は、デジタルプラットフォーム(DP)に対して、危険な商品の流通防止や、何か問題がおこったときにきちんとトラブルが解決できるような体制を整備させることなどの規制を盛り込んだ「新法」の法案を、2021年の通常国会に出す意向を表明したとのことです。

DPについては、今年は、いくつか勉強したね。
来年にも、DPの規制について法律ができるかもしれないんだね。

そうだな。
やはり、ここにきて、DPについての問題がいろいろと表面化している気がする。いい機会じゃないか。

ちょっとまとめておきますね。

「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(特定DP透明化法)についての記事は、こちらをどうぞ。
内部リンク:特定デジタル・プラットフォーム透明化法とは

キッズライン事件については、こちらを。
内部リンク:キッズライン事件をどう考えるか〜デジタル・プラットフォームと消費者保護〜

ウーバーイーツと使用者責任については、こちらを。
内部リンク:ウーバーイーツは配達員の自転車事故の責任を負うか〜デジタル・プラットフォームと使用者責任〜

法案提出をめぐる議論に注目!

さて、いま、まさにこの問題がホットです。

2020年12月24日の「第11回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会」では、消費者団体からたくさんの意見が出されています。

そして、その一方で、DP業者側からは、「われわれは悪者ではないですよ。われわれにお任せいただくのが一番です」という反対意見も出ています。

一つご紹介しましょう。
たとえば、新経連(楽天などが参加しています)からは、こんな意見が。

外部リンク:第11回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会

なになに・・・「政府はこうした自主的取組支援・促進するような施策を検討すべきであり、一生懸命に取り組んでいる事業者の手足をルールによって縛るような方向の施策は避けるべきである。」だって。

けっこう、一理あるじゃないか。まじめにやっている商売人の倫理観というものを信用してほしいな、たしかに。DPの規制は「負担にしかならない」というのもまったくそのとおりだな。
(引用元)
第 11 回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会 コメント(一般社団法人新経済連盟事務局長 関 聡司)

いやいや、「一生懸命」とか「まじめに」やってるかどうかという精神論ではないと思うんだけど・・・
それに、DPは、自分でものを売るわけでもなく、だれかを雇うわけでもなく、場を提供してお金を儲けているんだから、それにともなうそれ相応の負担なしでいいの?ノーリスクでいいの?、という側面もあると思うよ。

果たして、(どのような)法案が提出されるのか。非常に、興味深いです。

なんどもいいますが、DPは、みなさんが毎日使うものです。決して難しくありません。

ぜひ、いち消費者として、この法案提出をめぐる議論をみて、そして、参加してみませんか?

加筆(2021.1.7)

2020年12月24日、京都弁護士会から、「デジタルプラットフォーム取引における消費者被害の抜本的な法整備を求める意見書」が出ています。

外部リンク:京都弁護士会「デジタルプラットフォーム取引における消費者被害の抜本的な法整備を求める意見書」

どんどん意見をあげていきましょう!

加筆(2021.1.22)

さて、さらに、その後、2021年1月20日、朝日新聞で「出品削除拒否への罰則は見送り ネット通販規制の新法案」という報道がありました。

外部リンク:朝日新聞デジタル「出品削除拒否への罰則は見送り ネット通販規制の新法案」

新法の法案の中身が少しずつ見えてきたようです。

・出品されている商品の安全性などについて著しい虚偽や誤認表示があり、出品業者の連絡先も偽られている場合などに、サイト運営業者に削除を要請できるようにする。ただし、削除要請に応じないことに対する刑事罰は見送られる。

・消費者トラブル解決のための取り組みの開示も各サイトの運営業者に義務づけるが、努力義務とされ、刑事罰も見送られる。

うーん、なんだかずいぶんトーンダウンしているような。

さて、今後、意見募集(パブリック・コメント)があるはずなので、みなさん、一人ひとりが、しっかりチェックしましょう!

加筆(2021.5.7)

さて、その後、国会での審議を経て、2021年4月15日に「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」が成立しています。

外部リンク:議案情報

実際の運用に注目しましょう。

また、消費者一人ひとりが「申出」できる制度もあります。法10条が、その条文です。

法第10条 何人も、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

繰り返しますが、私たち一人ひとりは、DPのステークホルダーです。悪いところについてはどんどん「申出」をしていきましょう。


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院非常勤講師(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください