Covid-19(新型コロナウィルス感染症)と次亜塩素酸水の噴霧・その2

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入店前に「次亜塩素酸水を噴霧」 導入の居酒屋、「厚労省推奨の~は誤り」と訂正

https://www.j-cast.com/2020/05/20386331.html?p=all
J-CASTニュース2020.5.20.

その1のおさらい

さて、この記事は、「Covid-19(新型コロナウィルス感染症)と次亜塩素酸水の噴霧・その1」の続編です。

ええと、その1では、「消毒」「殺菌」「滅菌」「除菌」「抗菌」の違いについて整理したんだったよな?日本語って難しいな。

うん。
「消毒」「殺菌」は、医薬品や医療機器しかうたってはダメ。「滅菌」は、製品や機器について菌がゼロだよ、ということ。「除菌」は菌を減らすこと、「抗菌」は菌の増殖を抑制することで、それぞれ、業界でルールを作ってるんだったね。

そのとおりです。

では、いよいよ、次亜塩素酸水です。

次亜塩素酸水って何?

さて、まず、次亜塩素酸水とはなんでしょうか。

次亜塩素酸水とは、厚生労働省の定める「食品添加物公定書」にあります。

外部リンク:厚生労働省「第9版食品添加物公定書」

また分厚い書類だね・・・
どこにあるのかな?あった、634ページ。

「本品は、塩酸又は塩化ナトリウム水溶液を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。本品には、強酸性次亜塩素酸水(0.2%以下の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽(隔膜で隔てられた陽極及び陰極により構成されたものをいう。以下この項において同じ。)内で電解して、陽極側から得られる水溶液をいう。)、弱酸性次亜塩素酸水(適切な濃度の塩化ナトリウム水溶液を有隔膜電解槽内で電解して、陽極側から得られる水溶液又は陽極側から得られる水溶液に陰極側から得られる水溶液を加えたものをいう。)及び微酸性次亜塩素酸水(適切な濃度の塩酸又は適切な濃度の塩酸に塩化ナトリウム水溶液を加えて適切な濃度に調整した水溶液を無隔膜電解槽内で電解して得られる水溶液をいう。)がある。」

なお、このうち、「強酸性次亜塩素酸水」(PH2.7以下)については、医療用消毒器として、手指や内視鏡の消毒に用いられています。

とにかく、食品添加物なんだから安全なのかな?

そういうわけではなく、次亜塩素酸水は、「製品の最終完成までに除去されていなくてはならない」とされています。

次亜塩素酸ナトリウム

うっ、頭が・・・
とにかく、次亜塩素酸水は、3種類あるんだな・・。

あと、「次亜塩素酸ナトリウム」というのも聞いたことがあるが、それと同じものなのか?

いいえ。有効成分は次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンということで同じですが、この2つは、作り方が全く違います。

次亜塩素酸水は、上にもありますように、微酸性〜強酸性を示します。
これに対し、次亜塩素酸ナトリウムは、商品名「ハイター」などの塩素系漂白剤やプールの消毒剤に含まれる成分ですね。強いアルカリ性です。この水溶液も、食品添加物として使われることもあります。公定書の「次亜塩素酸水」の次のページにありますよ。

・・・ほんとだ。635ページにあるね。

こっちは、水酸化ナトリウムに塩素を吸収させて作ります。化学式でいうと、2NaOH + Cl2 → NaOCl + NaCl + H2Oです。

この、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液(0.05パーセント以上)は、厚生労働省なども、Covid-19(新型コロナウイルス感染症)予防のため、身の回りの物品の消毒に推奨しています。

外部リンク:厚生労働省「新型コロナウイルス対策」(PDFファイル)

ただし、注意ですが、次亜塩素酸ナトリウム希釈液を使っていいのは、あくまで「物品」の消毒です。①直接人体に使用することや、②スプレーなどの「噴霧」は、やめましょう。吸い込んだり、目にはいると、大変です。

消毒力があるということは、人体にとっても有害です。
漂白剤の注意書きにしたがって、しっかり換気をして使うべきです。

次亜塩素酸水は「消毒」に使える?

さて、では、次亜塩素酸水は、どうでしょうか。

さあ。名前も似てるから、いけるんじゃないのか?

今、経済産業省所管の独立行政法人のNITE(ナイト、製品評価技術基盤機構)というところが、次亜塩素酸水が消毒に使えるか、ということを検討しています。

外部リンク:NITE「新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します~物品への消毒方法の選択肢が広がります~」

ほんとだ、5月22日の「第3回委員会の議論のまとめ」で、「第2回委員会で選定した次亜塩素酸水(電気分解法で生成したもの)4種については、引き続き検証試験を実施することとする。」って書いてあるね。これのことかな?

そうですね。

なお、第3回委員会では、界面活性剤5種類について「有効」だという結果が発表されたようですね。

界面活性剤って、食器用の合成洗剤とかに使われているやつだよね。これでもいいんだ。

ただし、このポスターに「手指・皮膚には使用しないでください」などと、色々と注意点も書いてあるぞ。気をつけて使わないとな。

外部リンク:NITE「(ポスター)ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう」(PDFファイル)

「人体への噴霧」は?

ふんふん。
結局、次亜塩素酸水が「消毒」できるという根拠はいまのところなく、検証中、というわけだね。

そのとおりです。

そして、身の回りのものの消毒なら、別に、効果不明の次亜塩素酸水を使わなくても、今でも、色々と、手段があるのですよ。しかも、今回、合成洗剤でも有効という結果も出たようです。

そうだな。
それに、このNITEの実験も、「物品」の消毒についてのものなんだよな?それを、一足飛びに、人体に直接噴霧する、というのは、どうなんだろうな・・・

そうです。NITEは、FAQの中で、こう述べています。

Q4. 今回有効性評価を行う消毒方法の用途は何ですか?
A4.原則として物品に対する消毒を想定しています。

外部リンク:NITE「NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価について~よくあるお問い合わせ(令和2年4月30日版)(5月2日一部修正)~」

また、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)における評価を意味するものではありません。」という断り書きもなんども出てきますね。

ええ・・・大事なことなんだから、そういうのは、もっと大きく書いてほしいね。
だから、期待を煽るような人も出てくるんじゃないかな。

それに、もともと、消毒については、「噴霧」という方法は、昔ならばいざ知らず、今は、推奨されていないんですよ。まばらにしか薬剤がつかない噴霧より拭き取り(清拭)の方が効果が高く、また、「噴霧」すると、吸入してしまうおそれがあるからです。

なんか、霧みたいに吹きかけると、いかにも効きそうだけど・・・ほら、あのゴキブリをやっつけるやつみたいに・・・

「安心」とは

さて、次亜塩素酸水の人体への噴霧については、「消毒」という目的をはたす上で、現時点では有効であるという根拠もなく、また、安全であるとの根拠もないということになりそうですね。

でもな、このニュースに出てきた居酒屋も、決して悪気はないと思うんだよな。お客さんのことを一生懸命考えて、また、なんとかこの苦しい中で、事業を続けたくてやったことだし。責める気にはなれないな。

そうだね。「次亜塩素酸水を噴霧するトンネルをくぐっていただく事でより安心を感じていただけることを目的としております」というのも、なんとなく、分かる気がするなあ。私たちも、安心したいもんね。

そうですね。その気持ちは、とても、重要ですよね。

ただし、前にも言いましたが、私たち消費者は、単に、「安心」を求めるのではなく、「安心」の中身と、「安心」がもたらすもの(失うもの)を、今いちど、考える必要があるように思います。

とにかく、きちんと手洗いを続けましょう。
周りのものに一切触らないで生活していくことは難しいですし、消毒には、正直いって限界があると思います。


著者

住田 浩史

弁護士 / 2004年弁護士登録 / 京都弁護士会所属 / 京都大学法科大学院客員教授(消費者法)/ 御池総合法律事務所パートナー

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